Alex Fedorchenko
Alex Fedorchenko

まだ新しい、テフロン加工などが施された「こびり付かないフライパン」を使っているにもかかわらず、調理中の食べ物がこびり付いてしまう現象に出くわしたことのある人は多いはずです。チェコ科学アカデミーの研究チームはこの素朴な疑問を解消すべく研究した結果を論文にまとめて発表しました。

この研究では、表面がセラミック粒子でコーティングされた焦げ付き防止フライパンを用意し、真上からのビデオカメラ映像で加熱中のひまわり油の流体特性を調べました。すると、フラットなフライパンの表面にもかかわらず、中心部に油膜のない”ドライスポット”が発生し、それが成長していく速度を計測しました。また、この実験はテフロン加工のフライパンでも行われ、同様の結果が得られることを確認しました。

論文の共著者であるアレクサンダー・フェドルチェンコ氏はこのドライスポットの発生が”熱キャピラリー対流”現象によるものだと説明します。フライパンをしたから加熱すると、ひまわり油の油膜に温度勾配が発生し、温度が高い中央付近ほど表面張力が低下します。そして外周方向に行くにつれて表面張力が高い状態となって熱キャピラリー対流を発生、油が外周方向に引き寄せられます。そして、中央部の油膜が臨界値よりも薄くなって油膜が切れ、フライパンの表面が露出してドライスポットになります。

ではどうすればフライパンの中央にドライスポットが形成されず、食材がこびり付かなくなるのかという点については、油膜の厚みを増やす(油の量を増やす)、適度な加熱状態を保つ(温度を上げすぎない)、フライパンの表面を完全に油で満たす、底の厚いフライパンを使う、調理中に適度に食材をかき混ぜあわせるといった対策を適宜駆使する必要があるとフェドルチェンコ氏は述べました。

油の量を増やしたり、表面を油で満たしたりというのは、料理の種類によってできる場合とそうでない場合があります。またできたとしても、食後の胸焼け不可避な油ギトギト料理になってしまうかもしれません。一方で、温度を上げすぎないというのも、やはり調理の仕方によって対応できる場合とそうでない場合がありそうです。たとえば肉や野菜を焼く場合、温度が低すぎれば火が通る前に食材の水分が染み出てしまい、炒め物なのに煮物かというほどの汁気たっぷり料理になってしまいかねません。底の厚いフライパンを使うというのは、おそらく温度上昇を緩やかにして上がりすぎないようにするためと考えられます。

となると、焦げ付き防止フライパンを使うための最も上手なやり方は、加熱中も頻繁に食材を(油とともに)かき混ぜるのが一番良い方法かも知れません。そう、結局は適度な量の油と適度な温度で、しっかり食材を混ぜつつ炒めるのが正解ということです。

もしそれがうまくできず、ドライスポットができたままの状態や、コーティングが傷ついた状態で加熱を続けてしまった場合は、機器の電子部品に急激な過熱状態を引き起こし、破損させてしまう可能性があるとフェドルチェンコ氏は述べています。

Source:AIP Physics of Fluids

via:Ars Technica