Denis Balibouse / Reuters
Denis Balibouse / Reuters

先進工業国の電力需要の大半が、風力発電と太陽光発電の組み合わせだけでまかなえるとする研究結果がNature Communicationsに報告されています。この研究では42カ国の39年分のデータを調査した結果、各国の電力需要の72~91%はこれら再生可能エネルギーでカバーできるとしています。また気候条件によって電力供給ができなくとも12時間ぶんの蓄電エネルギーを使用できるとの条件を加えた試算では83~94%が風力でまかなえる計算になるとのこと。

ただし、たとえば風力で必要な量の90%を満たせるとした国を例にとっても、年間数百時間は電力不足になる可能性があるとしています。われわれの日常生活において、年間数百時間も電力が足りなくなることがあれば、至るところで不満が噴出することは避けられないと想像できます。

研究執筆者であるカリフォルニア大学アーバイン校のスティーブ・デイビス教授は「ゼロカーボンを目指す将来においても、国によっては、蓄電やその他の非化石エネルギー源によって需要を満たす必要がある日が、年間を通じて数多く存在する可能性があります」

太陽の光に恵まれる赤道付近の国々の場合は太陽光発電が有効に機能するため、持続可能な電力資源への転換が容易だと報告されています。一方、高緯度の国は日差しが弱く、風力発電への依存度が高くなります。それに加え中国・清華大学の地球システム科学者ダン・トン氏は「過去のデータからは赤道から遠い国では太陽光も風力も不足する曇天かつ無風な期間「dark doldrums」が発生することがある」として、蓄電もしくはその他の再エネ手段で需要を満たさなければならなくなることを指摘しています。

高緯度の国でも、たとえばカナダのように国土が広い国では、太陽電池や風力発電システムの信頼性が最も高くなります。一方、欧州の国土の狭い国々では自力で全てをまかなうのは難しく、互いに共同でエネルギーを融通することで電力不足を緩和することができる可能性があるとし、トン氏は「たとえばスペイン、イタリア、ギリシャでは太陽光発電、オランダ、デンマーク、バルト海周辺国は風力発電に適しており、それらの国々の発電能力を見合わせれば、より安定と信頼性が得られる」と述べています。そしてより多くの電力需要に対応するために、各国で発電能力の強化とバッテリー蓄電システムの追加に取り組むことが可能だとしました。

デイビス教授は「化石燃料を完全に排除することは難しいと考えられるものの、技術面、経済面、社会的意思の面を一致することができれば、その目標を達成することが可能だ」としました。

多くの国がCO2、メタンといった温室効果ガスの排出削減のため、化石燃料への依存を引き下げる努力を強化しています。気候変動対策に関するシンクタンクの調査によれば、欧州では2020年、再生可能エネルギーによる発電量が、化石燃料による発電量を上回ったと報告されました。しかし、今年9月には、EUの「温室効果ガスを2030年までに55%削減」の目標達成が困難だとする報告も発表されています。

Source:Nature Communications