▲ロボットトイ「toio」を使った「義足×ロボティクス」ワークショップにて。左からxDiversityの遠藤謙氏、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの田中章愛氏、xDiversityの落合陽一氏。

義足とロボティクスをテーマにしたワークショップ

日本科学未来館で開催された、「義足」と「ロボティクス」をテーマにした、xDiversity(クロス・ダイバーシティ)のワークショップ(緊急事態宣言実施前の7月11日に開催)。「AIで わたしが広がる 世界が変わる」をうたうxDiversityは、テクノロジーと社会課題をクロスさせて、多くの人によりそった問題解決の仕組み作りを目指すプロジェクトです。 

代表を務めるのは、メディアアーティストで筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター センター長/准教授の落合陽一氏。今回のワークショップは、xDiversityで行っているクラウドファンディングのリターンのひとつとして行われたもので、落合氏のほか、競技用義足の開発研究でパラリンピック選手のサポートも行っている遠藤謙氏も登壇し、参加者は各自に配られた小型ロボットを使って義足のことを学び体験しました。

使用したロボットは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されている、キューブ型の小さなロボットトイ「toio(トイオ)」。開発者である同社の田中章愛氏がtoioのプログラミングを解説し、「健常者」と「義足」の歩き方の違いなどをプログラミングを使って体験しました。ワークショップの様子は別の記事にて詳しく紹介しているので、ぜひそちらもご覧ください。

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本稿では、登壇した3人に、ワークショップで義足をテーマにした理由から、デジタルを活用する利点、落合氏の研究室でも活躍している「toio」のことまでお聞きしたインタビューをお届けします。

義足の試行錯誤を「toio」のプログラミングで知ってほしい

xDiversityインタビュー
xDiversityプロジェクト研究代表の落合陽一氏。メディアアーティストとして活躍する一方で、筑波大学をはじめとした複数の大学でも学生を教えています。

xDiversityインタビュー
遠藤謙氏。義足・ロボティクスの研究者、エンジニア。ソニーコンピューターサイエンス研究所研究員 、Xiborg代表取締役。
xDiversityインタビュー
「toio」の生みの親であるソニー・インタラクティブエンタテインメントの田中章愛氏。学生時代にはロボコンで 入賞した経験をもつ。

──「義足とロボティクス」というテーマの大変興味深いワークショップでしたが、今回ロボットの「toio」を活用してみていかがでしたか?

落合陽一氏(以下、落合):ワークショップは、想定していた5倍は良かったですね(笑)

toioの「工作生物 ゲズンロイド」見て、「Scratch」と歩行の組み合わせがワークショップに使えると思っていました。実際、toioの「足の人」につけた足のマテリアルを変えるだけで、特性が変わって思った通りに動かなくなる点がとても義足的だったと思います。

遠藤謙氏(以下、遠藤):みなさん、なんとなく「義足で歩くのは当たり前に簡単にできるよね」って感覚になっていますが、義足の方々はトレーニングしてあそこまでたどり着いているんです。その過程を無視して語る傾向にあるので、それまでの試行錯誤みたいなものをプログラミングでできたらなと思っていました。

xDiversityでは「OTOTAKE PROJECT」などで義足を扱っているので、せっかくなら義足とからめてワークショップをやりたいと落合さんに相談したら、「toioで歩いてみるのはどうか」というアイデアが出たんです。それで、「どういうものがありえるか」ということを突き詰めていったのが、今回のワークショップになります。

田中章愛氏(以下、田中):toioは、同じ歩き方を何度でも繰り返せるので、前と比較してどれだけ変わったというのがはっきりわかります。私はtoioを通して、足のことを改めて考えることができました。自分の足なら無意識のコントロールが入りますが、プログラムでコントロールするのはまた違った体験でした。パラメータを調整しながら、「こうするとうまくいく」ということを客観的に観察できる良い体験となりましたね。

ものがうまく動かないという経験もしてほしい

──遠藤さんが、ワークショップでプログラミングがうまくいかない小学生に「もっと苦しんでほしい(笑)」とおっしゃっていましたが、プログラミングを苦労してほしいのか、もっと“自分ごと”として当事者意識を持ってほしいのか、どちらの意味だったのでしょうか。

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ワークショップの会場をまわり、参加者に声をかける遠藤氏。

遠藤:両方ですね。プログラミングで、さっきまでうまくいっていたのが動かなくなるというのは、人生の中でいくらでもあります。世の中は動いているものしか見えないですが、実は動いてないものがいっぱいあるし、デバッグ作業を通らずしては新しく動くものが生まれない。ものをつくるプロセスってそこにあるので、そういうことは経験してほしいですね。

toioもプロトタイプの時代から知っていますが、最初は全然うまく動かなかった(笑)。その頃から考えるととても思い入れのあるプロダクトで、そういう気持ちを持ちながら、うまくいかないという過程が体験できたのもよかったです。

──toio開発者の田中さんなら、もっと義足のプログラミングもスムーズにできるかと思っていましたが、意外と苦労されていましたね。

田中:はい、素直に速く歩かせるのは大変でした(笑)。今回はみなさん同じ条件でしたので、プログラミングスキルではなく、「どういうふうに動かしたい」というイメージ力や、左右の足の条件が変わったときに「どういう材料の特性なのか」を観察する力などが大事になってきます。

沢山の人が取り組んだほうが、よりいい答えが出てきますし、実際、今日はみんなすごい早いペースでできていました。みんなでやること、多様な視点でつくるということには大きな意味があると思います。

xDiversityインタビュー
参加者は、田中氏のプログラミング解説を聞きつつ、左右で素材の違う「義足」がうまく動けるプログラムを考えた。

遠藤:落合さんがデモした際、足が絡まっている姿を見て、本人が笑っている姿もおもしろかったです(笑)。

「落合さんでも、やっぱりうまくいかないこともあるんだ……!」ということもわかったし、何よりも、本人が失敗をとても楽しんでいる様子を、みんなが見られたこともとても良かったですね。

落合:夢中でやってましたね。

xDiversityインタビュー
ワークショップの最後の発表で、自作のプログラムを披露する落合氏。歩行中に足が絡まって、思わず大笑いする場面も。

デジタルなら「トライ&エラーが簡単にできる」

──「toio」のようなロボットを親子で楽しむコツはありますか?

落合:余計なところは親がやる(笑)。パソコンに接続するとか、儀式みたいな作業が多いから……。

遠藤:こうしたワークショップは、「子どもに受けさせたい」と思って押し付けるように参加すると、うまくいかないんです。やっぱり親御さんも楽しんでほしいと思いますね。今回のワークショップでは義足の方も参加されていて、ずっと「義足はこう歩いてるんだよ」ということを言語化しながら、お子さんに伝えていた姿が印象的でした。

──では大人なら、どんな遊び方があるでしょうか。

落合:面白い使い方が色々ありそうだけど、個人的には子ども用のおもちゃを自作する人が出てくるといいなと思いますね。

僕は、ネコのおもちゃを自作したい。4~5歳児がtoioに乗っちゃったら壊れそうだけど、ネコが遊ぶぐらいなら壊れない耐性もありそう。

──今回は義足というテーマを、toioというデジタルを使って自分ごととしてとらえていきましたが、デジタルを活用するメリットはどんなところにあると感じていますか。

落合:トライ&エラーが簡単にできるのが、デジタルツールのおもしろさですね。僕は短気なので、プログラムでコンパイルするぐらいのスピードの時間しか待てない(笑)。

今回も、例えば本当の義足のようにカ ーボンを焼いて、いい義足のパラメーターそろえてワークショップをしようと思ったら、子どもは飽きて帰ると思う。3Dプリンターでできあがるの待っていたら数時間かかってしまう。それに比べて、こういうシンプルなロボットだったら、プログラムしてボタンを押してすぐ動く。子どもはすぐ飽きるから、こういう数秒で動くものがいい。

xDiversityインタビュー
プログラミングがすぐに反映され動く「toio」は子どもでも簡単に扱え、トライ&エラーに向いている。

トライ&エラーの速度をあげるには、デジタルが向いていると思います。一方、わざわざデジタルを使わなくても、粘土でよいものもありますね。

──そこは使い分けということですね。

落合:トライ&エラーにおいては、速度、アンドゥ、壊れにくさに加えて、手先の器用さが影響しないことが重要です。

toioは90年代後半に描いていた理想がやっと形になった

──最後に、toioを一言で表現するならなんでしょうか?

田中:ダイバーシティでしょうか。今日は「xDiversity」のワークショップでしたが、色々な課題に対応できるし、男女や年齢に関係なく楽しんでもらえるものだと思っています。

遠藤:僕はMITメディアラボにいたので……メディア、媒体でしょうか。

何かの目的のために、ひとつひとつ組み立てていってたどり着くまでのってハードルって高いですが、toioはきわめて敷居が低いメディアだと思います。

落合:toioは、やっと市販された石井先生(笑)。

※注:石井先生とは、マサチューセッツ工科大学教授の石井裕氏のこと。ヒューマンインターフェースの第一人者であり、「タンジブルインターフェース」(実体感のあるインターフェース)を提唱し研究を行っている。

遠藤:それ、わかる!(笑)

落合:タンジブルな感じがする……。タンジブルインターフェースにとても近い。

これまでにも「市販された石井先生(笑)」 の研究成果と言えるような製品は あったけれど、どれも、もう一押し足りなかったんです。

その点、toioは手にちょうど収まって、物理的なフ ィードバックもあって、常に位置がトラッキングされています。90年代後半ぐらいに研究者みんながや りたかったことが、20年越しにやっと実用化された。実現するには、リチウムポリマーもマイクロコントローラもアクチュエーターもすべて小型される必要があり、かつそれで低消費電力でないとできなかったから、ずいぶん時間がかかったなと思っています。

そして、このtoioをどんな風に使っていくのかは、みなさんの作り方次第ですね。 

──なるほど……。toioは20年越しで実現化した、待望の小型ロボットなんですね。このtoioが、小学校から大学の研究室、さらにはガジェット好きの大人たちまで広がっていくことで、どんなtoioの使い方が見られるのか、これからが楽しみです。

落合さん、遠藤さん、田中さん、今日はありがとうございました。

 

xDiversityインタビュー
xDiversityの遠藤氏と落合氏。

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