Xbox Game Studios
Microsoft

マイクロソフトの Xbox Game Studios Publishing が、革新的なゲームデザインで知られる開発者キム・スウィフト氏をクラウドゲーム開発の担当者として獲得したことを明らかにしました。

キム・スウィフト氏は『Portal』のオリジナル開発者として知られるゲームデザイナー。学生プロジェクトとしてゲームデザインとプロデュースを務めた『Narbacular Drop』が Valveのゲイブ・ニューウェルの目に止まり、チームごと入社して洗練させた『Portal』がヒットしたほか、『Left 4 Dead』やその続編にもメイン開発者として関わっています。

その後はAirtight Gamesを経由してAmazonで未発表ゲームのシニアデザイナー、EAのMotive Studiosでデザインディレクターとしてスター・ウォーズバトルフロントIIを担当。Google がクラウドゲームサービス Stadia 専用の独自ゲーム開発のため、自社スタジオ Stadia Games & Publishing を立ち上げた際にはゲームデザインディレクターとして参加していました。

Googleが自前のゲーム開発スタジオ設立。Stadiaプラットフォームの新作と支援を担当 (2019年)

しかし Google はクラウドネイティブな独自ゲームを自社開発するよりも、まず外部のゲーム開発スタジオに Stadiaでゲームを出してもらうことを優先する方針に切り替え、二年経たずに独自スタジオを閉鎖したのは記憶に新しいところです。

Google, Stadia専用ゲーム開発スタジオを閉鎖。他社支援とプラットフォーム強化に注力 (2021年)

Xbox Game Studios Publishing は、マイクロソフト傘下スタジオの集合体 Xbox Game Studios のなかで、外部スタジオと連携したゲーム開発とパブリッシングを担当する部門。マイクロソフトのXbox Games マーケティング担当GMアーロン・グリーンバーグによれば、キム・スウィフトは「クラウドネイティブなゲームなど新しい体験」 を主導するチームに参加します。

「クラウドネイティブ」といえば、Googleが Stadia を発表した際にも未来の可能性としてアピールしていました。

クラウドゲームのもっともシンプルな利点は、高額なゲーミングPCやゲーム機を購入しなくても、通信環境さえ良ければ安価なスマホでもスマートTVでも、あるいはNintendo Switchのような携帯ゲーム機でも、ストリーミングで豪華なグラフィックの本格的ゲームが遊べることですが、これは言い方を変えれば「すでにあるもの」をより手軽に、多くの人に楽しめるようにする方向性です。

これに対して「クラウドネイティブ」は、現在のもっとも高価なゲーミングPCでも比較にならないほどの処理能力と容量を備えたクラウドサーバ群自体を新しい概念のゲームプラットフォームに見立て、常に膨大な数のプレーヤーが接続できること、クラウド内では遅延が極めて少ないこと、全プレーヤー視点からの映像に遅延なくアクセスできることなどを活かした、新しいゲームを作る発想。

速報:Googleのゲームサービス『STADIA』発表。YouTubeのゲーム動画から即プレイ開始 (2019年)

Stadia向けの「クラウドネイティブなゲーム」はサードパーティー開発者も含めて複数の取り組みが進んでいたと伝えられていますが、具体的にどんなゲームになるのかは、高らかに構想を謳った Google 自身がすごい勢いで手のひらを返したため不明のまま。しかし Project xCloud / Xbox クラウドゲーミングを推進するマイクロソフトがピックアップしたことで、何らかのかたちで実現する希望が出てきました。

Xbox Game Studios Publishing は使命のひとつとしてイノベーションを掲げ、これまでにない新しい形態のゲームの可能性を探ることを目標としています。キム・スウィフト氏は開発スタジオ各社と協力しつつ、ゲームデザインの段階からクラウドネイティブなタイトルの開発を目指す役どころです。

具体的なタイトルや担当スタジオの情報はありませんが、以前のうわさとしては、メタルギアやデス・ストランディングの小島監督率いるコジマプロダクションが、Stadia向けにクラウドネイティブなゲームに取り組んでいるという話がありました。たとえばVentureBeatの Jeff Grubb はこの「コジプロのクラウドネイティブ作品」について、現在もゲームデザインの初期段階で、Stadiaではなくマイクロソフトとパブリッシングについて交渉中と主張しています。

マイクロソフトのクラウドゲームへの取り組みは、現時点では定額サービス Xbox Game Pass の全部入りプラン Ultimate 加入者向けの特典として、PCやXboxですでに楽しんでいるゲームが Android スマホでも動きます、同じゲームを外出先でもそのまま継続できますというゲーマー向け付加価値の段階。

しかしマイクロソフトのゲーミング部門責任者フィル・スペンサーは、クラウドゲームを現在のゲーミングPCユーザーやXboxゲーム専用機の購入者だけでなく、世界数十億人の潜在的なゲームプレイヤーにリーチする手段、ハードウェアの境界なくプレーヤーをつなぐ手段とする立場を繰り返し強調してきました。

現在は Androidスマートフォンのアプリで動かす xCloud ですが、iPhone や iPad、PCなど多数のプラットフォームに拡大できるブラウザ版 xCloud や、コントローラがあればテレビだけで遊べるスマートTVへの組み込みといった施策を積極的に進めていることもこの方針の現れです。