ここ最近、日本市場での攻勢を強めている中国のシャオミ。ソフトバンクに5G対応で税抜き2万円を切る「Redmi Note 9T」を提供し、SIMフリー市場向けにもハイエンドに匹敵するカメラやディスプレイの性能を備えた「Redmi Note 10 Pro」を3万円台で販売するなど、同社の強みである圧倒的なコストパフォーマンスを武器に攻めの姿勢を続けています。

そのシャオミが2021年6月24日、再びSIMフリー市場向けに新機種「Mi11 Lite 5G」を投入することを発表しました。同機種はすでにシャオミ自ら日本での発売を明らかにしており、価格も4万3800円であることを事前に公表していたものですが、クアルコム製のミドルハイ向け最新チップセット「Snapdragon 780G」を搭載し、5Gに加えFeliCaにも対応するなど国内向けのカスタマイズも加えながら、ここまでの低価格を実現しているのには驚きがあります。

そこでシャオミの東アジア担当ゼネラルマネージャーであるスティーブン・ワン氏に、グループインタビューで話を聞く機会を得たことから、同社がMi11 Lite 5Gを日本に投入するに至った経緯と、その狙いについて確認してみましょう。

Xiaomi Masahiro Sano
▲グループインタビューに応えるシャオミのスティーブン・ワン氏

スティーブン氏によると、シャオミは2021年第1四半期に5000万台近い台数のスマートフォンを出荷しており、出荷台数シェア世界3位を維持しており足元のビジネスは好調とのこと。一方でここ最近世界的に大きな問題となっている半導体不足が同社、さらには業界全体に悪影響を及ぼしていようです。

半導体はスマートフォンだけでなくAIやIoT、そして自動車と幅広い業界からの需要が高まっているのに加え、コロナ禍で予想に反して需要が拡大したこと、そしてサプライチェーンに自然災害など予測できないトラブルがいくつか発生したことで需給バランスが大きく崩れており、この状況は「1年以上不足が続くと思う」とスティーブン氏は話しています。

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▲世界的な問題となっている半導体不足はシャオミだけでなく、さまざまな業界に当面大きなマイナスの影響をもたらしているとのこと

一方でスマートフォンには多くの半導体が使われており、シャオミのスマートフォンにも1台当たり114種類の半導体チップセットが用いられているとのこと。中でも半導体不足で需要が特にひっ迫しているのが、CPU、ディスプレイ、そして充電に関連する部分とのことで、いずれもスマートフォンを構成する重要なパーツとなっています。

そうしたことから最近では、スマートフォン新製品を開発する上でチップセットの数を減らしたり、古いチップセットを使ったり、あるいは最新のチップセットを使いつつも従来より値段を高くするなどの対応を取る企業が増えているとのこと。ですがシャオミは、さまざまな困難がありながらも従来通りの価格で、最新のチップセットを用いた新製品投入を実現したているとのことで、その1つとなるのがMi11 Lite 5Gなのだそうです。

実際Mi11 Lite 5Gには、先にも触れた通りクアルコムの最新のチップセット「Snapdragon 780G」が搭載されているほか、チップが必要ながらニーズの高い33Wの急速充電にも対応しており、さらに急速充電対応の充電器も同梱しているとのこと。6.81mmという本体の薄さを追及するため、ディスプレイにもフレキシブル有機EL素材を用いているとのことです。

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▲Mi11 Lite 5Gにはミドルハイクラス向けの最新チップセット「Snapdragon 780G」を搭載。ハイエンド向けの「Snapdragon 888」と同様のプロセスで製造されていることから高い性能を誇るという

それに加えて国内向けにFeliCa対応を施し、5Gにも対応しながら、SIMフリー市場向けに4万円台で販売するというのは確かにお得感が高いと感じます。半導体不足の中そうした機種を日本で積極販売するというのは、それだけシャオミが日本市場開拓に力を入れていることを示しているともいえそうです。

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▲海外版にはないFeliCaにも対応するなど国内独自のカスタマイズも施されているが、それでいて4万円台という価格を実現している

ただ2021年3月に同社がRedmi Note 10 Proを発表した際、スティーブン氏は日本でまだ5Gの普及が進んでおらず、消費者の多くが4Gの製品を求めているとも話していました。それから約3か月しか経過していないにもかかわらず、5Gのスマートフォンを投入に至ったというのは気になるところ。この点についてスティーブン氏は「消費者に色々な選択肢を提供したいと考えている」と回答、5Gのスマートフォンが欲しい顧客に向けてMi11 Lite 5Gを提供するに至ったと答えています。

また同社の「Mi11」シリーズは、シャオミ自ら“究極”のAndroidスマートフォンとうたう「Mi 11 Ultra」をはじめハイエンドモデルのラインアップが多いのですが、にもかかわらずなぜ、日本市場向けにミドルクラスのMi11 Lite 5Gを選んだのかというのも気になるところです。その理由についてスティーブン氏は「シャオミとしてはハイエンド製品を投入しても、非常に大きな付加価値を加えられるかというとそうでもない」と答えています。

日本ではiPhoneの人気に加え、国内メーカーが力を入れていることもあってハイエンドモデルの競争が激しいですが、一方で低価格帯に力を注ぐメーカーは少なく、「日本のミッドレンジは昨年のテクノロジーを使っていてアップグレードされていない」(スティーブン氏)ことから、強みを打ち出しやすいミドルクラスを選ぶに至ったようです。

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▲Mi11 Lite 5Gの概要。ミドルクラスながら最新の性能を積極的に取り入れていることが、競合と比べた場合の大きな優位性につながると見ているようだ

これら一連の発言を考慮すると、シャオミがMi11 Lite 5Gの投入には競合の存在、より具体的には同じ中国のオッポの存在があるように感じます。オッポはFeliCaに対応したミドルクラスの「Reno A」シリーズを投入して以降、日本での人気を急上昇させており、Android端末に限ればSIMフリー市場でシェアトップを獲得。2021年にはその最新モデルとして、5Gにも対応した「OPPO Reno5 A」を発表しています。

ですがReno Aシリーズは、コストパフォーマンスは高いものの必ずしも最新の機能や性能を備えているわけではなく、OPPO Reno5 AもSnapdragon 780Gの1つ前の世代となる「Snapdragon 765G」を採用しています。そうした部分に目を付けてOPPO Reno5 Aと同様5GとFeliCaに対応したミドルクラスのモデルながら、最新のチップセットを搭載したMi11 Lite 5Gを投入することで、SIMフリー市場での存在感を高めてオッポからシェアを奪いたいというのがシャオミの狙いといえそうです。

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▲5Gに加えFeliCaも搭載している点から見るに、Mi11 Lite 5Gはオッポの「OPPO Reno5 A」を強く意識したモデルといえる

そしてもう1つ、シャオミがMi11 Lite 5Gで狙っているのは、「ahamo」など携帯3社のオンライン専用プラン契約者でもあるようです。店頭でのサポートがほぼないオンライン専用プランの契約者はスマートフォンに詳しい人が比較的多く、それでいてコストパフォーマンスを重視する傾向が強いことから、そうした顧客を獲得するためMi11 Lite 5GにFeliCaを搭載した狙いも大きいと、スティーブン氏は説明しています。

ただシェアを高める上ではブランド力も重要になってきます。シャオミは世界3位のメーカーとはいえ日本では新興のスマートフォンメーカーに過ぎず、一般的な知名度が高いとは言えません。それゆえ例えば、携帯3社のメインブランドから安さを求めてオンライン専用プランに移った、スマートフォンにそこまで興味がある訳ではない人達がシャオミのスマートフォンを選ぶとは考えにくいというのも正直なところです。

スティーブン氏は「(大規模キャンペーンを)できるリソースは持っているが、現在は最良の製品を魅力的な価格で提供することにリソースを投入している」と話し、あくまで製品力を重視して口コミによる認知拡大を推し進める考えのようです。ライバルのオッポがテレビCMなど大規模プロモーションでブランド向上を図っているだけに、それとは真逆の戦略を打ち出している点は非常に興味深いところですが、その成果がどのタイミングで現れてくるかというのも、シャオミが日本で存在感を高める上で重要なポイントになるといえそうです。

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