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「Xperiaは絶対に負けない」

今年5月下旬ごろ、ソニーの人とオンラインで話す機会があったので「シャープがAQUOS R6で1インチセンサー載せてきましたけど、本来なら1インチセンサーや1インチのデジカメを作っているソニーが先にやるべきだったんじゃないですか」と聞いたことがあった。

すると一瞬、表情を曇らせたが(オンラインでもわかった)、強い口調で「石川さん、Xperiaは絶対に負けませんから」と断言したのだった。

▲1インチセンサーを搭載するAQUOS R6

その時は「なぜ、ここまで強気なのか」と理解できなかったが、5ヶ月後の10月26日になって納得できた。世間がAQUOS R6に注目していた頃、ソニーは1インチセンサー搭載のスマートフォン「Xperia PRO-I」を着々と準備していたのだった。

かつて、ソニーモバイルコミュニケーションズの岸田光哉社長(いまはソニー関連4社が統合され、ソニー常務)が「Xperiaをカメラ売り場にあるαの横に置きたい」と語っていたことがある。

カメラ売り場に置かれるには、まず「SIMフリー」であることが大前提になるし、さらにαを買いに来たお客さんが手を伸ばすような存在でなければならない。

Xperia 1シリーズもSIMフリー化されつつあるが、αやRX100シリーズを買いに来るお客さんにとってみればXperia PRO-Iはまさに「購入候補」にふさわしい存在と言えるだろう。

▲Xperia PRO-I

デジカメの世界で1インチセンサーと言えば、ソニー「RXシリーズ」が有名だ。高級コンパクトデジカメの「RX100」シリーズと、望遠ズームが魅力の「RX10」シリーズ。特にRX10シリーズは高画質で暗いところでの撮影にも強く、携帯性も良くて、IT関連のライター陣に愛用者が多い。

ライターの記者会見や発表会での仕事はメモや質問がメインであり、写真撮影は「おまけ」的な位置づけに近い。本来ならば、カメラマンさんのようにαシリーズのような本格的なデジカメで撮影するのが理想だが、ライターには状況に応じてレンズを付け替える余裕はない。RX10シリーズのような手軽で、かつ望遠で、1インチセンサーで暗いところも強いので、ステージの登壇者をバッチリ撮影できるカメラが人気なのだ。

筆者は長年、RX10シリーズとRX100シリーズを愛用してきた。まさに「1インチを愛し、1インチに愛された男」といっても過言ではない。

▲ソニー RX100VII

実は、パナソニックが1インチセンサーを搭載した「CM-1」を開発していたころから、ソニーのXperia開発陣には「1インチセンサーを載せたXpeira、作ったりしないんですか」と聞いていたことがある。CM-1が発売されたのが2015年なので、もう6年も前のことになる。

▲LUMIX DMC-CM1

6年近く待ち焦がれて、ようやくソニーが1インチを搭載した「Xperia PRO-I」を出してくれたのだった。

iPhoneとの直接対決を避け黒字化に成功

ソニーのXpeiraは、かつてNTTドコモからGalaxyとともに「ドコモのツートップ」と持ち上げられたが、その後、NTTドコモがiPhoneを取り扱い始めると一気に販売台数が減少。いまでは最盛期の1割以下の出荷台数まで落ち込んでいる。

しかし、ソニーのモバイル事業は2020年度には277億円の黒字化を達成。ここ数年、モバイル事業は赤字が続き、周辺からは「ソニーはXperiaを諦めるのではないか」とささやかれるほどであったから、この黒字化は悲願と言えるのだ。

当然のことながら、赤字を減らして行くには、それなりの痛みを伴う。しかも、販売台数を減らしながらの黒字化ということは、スマートフォン1台あたりの単価をあげるということになる。この数年、Xperiaは「万人向け」から「尖った人向け」にシフトすることで、iPhoneとの直接対決を避けてきた。その結果が、黒字化につながったのだ。

黒字になれば、組織は次の一手として新しいことに着手できる。そのひとつの答えが「Xperia PRO-I」というわけだ。

▲Xperia PRO-I

Xperia PRO-Iでは単に静止画が綺麗に撮れるというだけでなく、動画の撮影にも注力している。これまでXperia 1シリーズでは、「Cinematography Pro」というシネマ撮影を堪能できるアプリがあったが、メディア関係者からは「設定が難しすぎる。Cinematographyアマチュアを作って欲しい」なんて声が上がっていた。

Xperia PRO-Iでは手軽に映像作品を撮影できる「Videography Pro」を搭載。起動してすぐに決定的瞬間を撮影できるような環境を整備した。

▲Videography Pro

さらに、オプション品としてVlog Monitorを用意。Xperia PRO-Iに3.5インチのモニターを接続できるようになっており、本体の1インチセンサーカメラで自分を撮影しながら、その様子をモニターで確認できるようにした。

▲Vlog Monitor

ソニーではこれまでαやRX100シリーズ向けに発売してきたシューティンググリップも使えるようにするなど、VlogerやYouTuberに狙いを定めた商品開発を進めてきた。

この背景にあるのが、ソニーのVlog向けコンパクトデジカメ「VLOGCAM ZV-1」の大ヒットだ。

ソニー関係者は「とにかくZV-1がヒットしたのが大きい。ベースはRX100シリーズなのに、VLOGCAMと言って売ったら馬鹿売れして驚いている」と語るのだ。

▲VLOGCAM-ZV-1

モバイル事業の黒字化、さらにVlog向けカメラのヒットがXperia PRO-Iの開発を後押しした感がある。

ソニーのテレビやデジカメが強いのは安売りから決別し「プレミアム路線」に振り切っている点が大きい。Xperiaも今後、事業として黒字化を維持できれば、面白いプレミアム路線の商品が次々と出てくる可能性がありそうだ。

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