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iOS 11の新機能「Apple Pay Cash」「NFC開放」を読み解く:モバイル決済最前線

WWDC 2017におけるApple Payのアップデートとは

鈴木淳也 (Junya Suzuki) , @@j17sf
2017年6月12日, 午前11:30 in Services
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▲Apple Payの4つめの新機能として紹介されたP2P送金


もはやApple Payがモバイル決済の世界を大きく動かしたことは揺るぎない事実だ。日本国内でもその効果がいろいろなデータから如実に表れつつあるが、これについては改めて紹介していきたい。今回、その仕掛け人であるAppleから同サービスのいくつか重要なアップデートが発表されたので、それらについて考察していきたい。

「Apple Pay Cash」と「P2P送金」ビジネスモデルの実際

WWDC17の基調講演で米AppleのiOS開発を統括するCraig Federighi氏が説明したように、Apple Payでは「NFCを使った対面決済」「アプリ経由のオンライン決済」「Webブラウザ経由のオンライン決済」の3種類の機能を備えており、今回発表されたiOS 11ではこれに「P2P送金」の機能が追加される。仕組み自体は非常にシンプルで、iMessageのインターフェイスを使って相手側に指定金額を送金できるというものだ。あるいはSiriに呼びかけるだけでの送金も可能だ。通常、Apple Payのウォレットにはクレジットカードまたはデビットカードが登録されているので、ここから送金が行われることになる。

そして、ここから出金されたお金を受け取る場合に登場するのが「Apple Pay Cash」だ。これは一種のApple口座と呼べるもので、ここに貯めたお金はApple Payの買い物に利用したり、あるいは銀行口座へと"出金"することができる。公開されている資料だけでは不明な部分があるが、一般に米国でのデビットカードは銀行口座にそのまま紐付いているため、Apple Payに登録されたデビットカードにお金を転送することで"出金"と同等の扱いになると思われる。おそらくクレジットカードでもマイナス請求扱いでの処理が行われると考えている。PayPalなどのサービスを使ったことのあるユーザーなら、簡単に利用スタイルが想像できるシンプルなものだ。
 
▲iMessageやSiriのインターフェイスで簡単に個人間送金が可能
 
▲「Apple Pay Cash」はApple口座として機能する。支払いや出金も可能

プレゼンテーションでの説明だと不明点が多いが、より詳細な情報をRecodeが報じている。それによれば、iOS 11リリース後の今秋に正式にサービスが開始されるP2P送金の機能は、デビットカード経由での送金は手数料無料、クレジットカード経由での送金は3%の手数料となり、既存の競合と同等だという。Apple Pay Cashを含めたP2P送金の基本機能はGreen Dotが提供しており、今回のサービスではAppleが既存のサービス業者との提携で実現した形のようだ。
 
▲Apple Pay Cashを含めた基本的な仕組みを提供しているGreen Dot

ここで気になるのは"既存の競合"の部分だが、これはPayPal傘下のVenmoのことだろう。VenmoはP2P送金や支払いなどがアプリを通じて簡単に行えるサービスで、銀行送金(デビット)を使う限りは手数料無料で、かつフレンズ同士が各々の活動状況をソーシャルストリームで確認できるというユニークな仕組みが受け、特に若年層などを中心に人気のサービスとなっている。もともとBraintreeの買収に付随してきたサービスではあるが、似たような仕組みを提供するPayPalとは年齢層や利用スタイルがあまり被っておらず、うまく棲み分けが行われている。

ただ1点、ここで問題となるのはApple PayがVenmoと同じモデルを採用したという点だ。手数料が安いということで人気を博したVenmoだが、その実Venmo側は手数料収入を得られないため、将来の収益源を探してビジネスモデルを再構築中の状態にある。手数料の安さが利用の急拡大につながったのは中国のAlipayやWeChat Payも同様だが、今後P2P送金の市場が世界的に大幅に拡大すると見込まれているのに対し、そこから直接利益を得ることがあまりできていないという問題も顕在化している。おそらくApple PayのP2P送金機能も同じ問題を抱えており、この仕組みは「Apple経済圏拡大のための撒き餌」としての扱いなのだと筆者は考えている。つまりApple Payで稼ごうとApple自身は考えておらず、あくまで同社の収益源はハードウェアやサービスのサブスクリプションにあるのだ。

初のNFC開放で業界標準に歩み寄るApple

もう1つのトピックは開発者向けドキュメントで公開されている「Core NFC」というiOSのフレームワークだ。iOS 11以降で利用可能になるこのフレームワークでは、いわゆるNFCタグを認識して内部のNDEF(NFC Data Exchange Format)データを読み取れるようになる。対応するのはNFC Forumで定義されているType 1からType 5までのタグで、Core NFCを利用することでiOSアプリはタグの内容に応じた振る舞いをすることが可能になる。例えば、URLが記載されたタグであればWebブラウザ経由で目的のページを開き、プログラマブルなタグであればiPhoneをタッチすることでアプリの挙動を変化させることができる。また、詳細な部分が現時点で不明なものの、Bluetoothハンドオーバーの仕組みを使ってNFC機能による機器同士をペアリングする仕組みの実装が可能になるかもしれないなど、将来への展開に期待が非常に持てる内容だ。これはAppleとして、初めて外部の一般開発者にNFCの機能を開放を行ったことを意味している。

Core NFCのドキュメントで最も興味深い記述は下記の部分だ。

Note

Reading NFC NDEF tags is supported on iPhone 7 and iPhone 7 Plus.


つまり、タップ&ペイによるApple Payを利用可能な「iPhone 6」や「iPhone 6S」(さらにいえば「iPhone SE」も)は、このCore NFCによるNFCタグの読み取りの仕組みを利用できない。ハードウェアの仕様的な問題だが、少なくともAppleはiPhone 6の時点ではNFCを外部に開放する気がそもそも存在していなかった可能性が高い。

NFCの業界標準を策定するNFC Forumでは、「Reader/Writer(R/W)」「Card Emulation(CE)」「Peer to Peer(P2P)」の3種類の動作モードを定義している。このほか、読み取り可能なフォーマットとしてType 1からType 5まで5種類のタグを定義している。今回、5種類のタグを読み取り可能なR/Wのモードがサポートされたことで、すでにサポート済みのCEと合わせ、iPhoneにおけるNFCサポートがよりNFC Forum標準に近付いていることがわかる。ただ、現時点でまだP2Pに関する動作が未知数なのと、CEで利用されるセキュアエレメント(SE)の領域へのアクセスがAppleの他に開放されておらず(例外はJR東日本のSuicaアプリのみ)、あくまで限定的だ。同社のスタンスとして、Apple PayのWalletアプリにみられるようにシンプルで統一的なユーザー体験を目指しており、CEの機能開放には依然慎重な姿勢を続ける可能性が高いとみている。

▲NFC Forumが定義する、NFCの3つの動作モードと対応する5種類のタグフォーマット

もう1つ、地味ながらiOS 11でサポートが行われたものにQRコードの読み取り機能が挙げられる。標準のカメラアプリで読み取るだけで利用できるので非常に便利だ(TechCrunchの参考記事)。古い技術としてバカにされることも多いQRだが、そのシンプルさに加え、WeChatなど人気アプリの一部で情報交換フォーマットとして採用されたことから、主に中国を中心に現在もなお街中にQRコードが増え続けている。AlipayやWeChat Payでは決済システムにも採用されたほか、MasterCardのMasterPassのように決済手段の1つとして利用可能なケースもあり、意外と古くて新しい技術として活用が進んでいる。別にApple Payの決済手段にQRコードが加えられたわけではないが、手元にiPhoneしかなくて街中のQRコードが読めずに困るという経験は少なからずあり、これが標準機能としてiOSに加えられるのは筆者としてはありがたい。OSが肥大化することでシンプルさが失われつつあるという意見はあるものの、前述Core NFCのサポートにもあるように、iOS 11での新機能はAppleがしだいに業界標準を受け入れつつある過程が見えて興味深い。
 
▲とはいえ、中国語圏を中心にQRコードを見かける機会は増えている。写真は左から順に台北、シンガポール、深センの街中で撮影されたもの
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