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Apple MusicのApple Digital Mastersが「マスター」を名乗っている理由(本田雅一)

"疑って悪かった"。こちらからは以上です。

本田雅一, @rokuzouhonda
2019年8月15日, 午後12:20 in applemusic
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Appleが「Mastered for iTunes」を「Apple Digital Masters」という名称に変更するとともに関連資料をアップデートしたため、いくつかの記事や観測が出ています。しかし、やや誤解も見受けられるので、今回はその背景や"なぜ高音質になるのか?"についての話をしたいと思います。

「Apple Digital Masters」でストリーミング音楽が高音質になる......といったニュアンスの情報も見受けられますが、Apple Musicは2015年に発表されて以来、高音質(AACの256kbps)ストリーミングに対応しており、当時からMastered for iTunes(=Apple Digital Masters)の楽曲は音質グレードを落とすことなく配信されています。

とはいえ、音質にこだわる方々は"AACで圧縮した256kbpsごときのエンコードで高音質など、片腹痛いわ!"と思っていることでしょう。筆者もTIDALのHiFi契約料を払ってFLACやMQAの配信を楽しんでいるクチなので、その気持ちはよくわかります。

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ただ、もともと"なにがマスター品質やねん"と思っていたApple Digital Masters(=Mastered for iTunes)について取材してみると「あぁ、そりゃ音は良くなるね」と納得した次第なのです。

Apple Digital Masters(=Mastered for iTunes)が高音質になる理由

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Mastered for iTunesが開始された2012年当時、まだApple Musicは始まっておらず、iTunes Storeでの音楽ダウンロード販売が主でした。かつては128kbpsだったAACファイルの販売も、この頃は256kbpsに強化されていましたが、エンコード元のデータはCD用にマスタリングされた16bit/44.1kHzフォーマットのマスターです。マスタリングエンジニアがCD向けに作り込んだデータですが、そもそもAACでエンコードするのであれば、CDフォーマットにこだわる必要はありません。おそらく最初の発想は「CDフォーマットの制約からの脱却」だったのでしょう。

16bitという量子化ビット数は高音質を実現するにはやや微妙なところで、量子化ノイズが結構大きいんですね。そこでCDマスターにはディザー(あるいは各社が提供しているビットマッピングという手法)で、聴感上の解像度を上げる工夫が施されています。

しかし、ディザーにせよ各種ビットマッピングにせよ、信号的にはある種のノイズを加えることになります。ノイズも情報なので、AACでエンコードする際にはビットレートをある程度喰われてしまいます。そのためMastered for iTunesでは、オリジナルのデジタルマスターからCDマスタリング音源を介さずにiTunesで配信するファイルを生成できるようにしたのです。

これにはいくつか技術的なポイントがあり、掘り下げるとなかなか深い話なのですが、簡略化して説明しましょう。

マスター音源は多くの場合、24bit解像度で制作されています。24bit/96kHzのものもあれば、24bit/48kHzのものもありますし、中には192kHzマスターもあるにはありますが、いずれにしても解像度は24bitが主流です。

そこでこれを44.1kHzに変換する際、誤差を抑えるために32bit浮動小数点のデータでサンプリング周波数変換(SRC)を掛けます。SRCのフィルタにも、プリエコー(インパルス応答波に対して時間軸の前に出るノイズ)が出ないような工夫が施されているようですが、とにかく情報を失わないよう32bit浮動小数点で扱われるわけです。

そして元の解像度が高いことを活かして、ディザなどの処理を施さずに直接、AACの256kbpsでエンコードをします。

ノイズが加えられていない分、効率よく音楽情報のみにビットが割り当てられますし、16bit解像度を前提としたマスタリングにもなっていないため、CDマスターを圧縮したときよりも高音質になる......というわけです。

というわけで聴き比べてみました

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......と、ここまでの説明は単なる"理屈"であって、結果的にどうなんだ? というところが、みなさん気になるところでしょう。

Apple Digital Mastersで使われるサンプリング周波数変換のモジュールや、AACエンコーダはmacOSのバージョンごとにアップデートされており、Logic Proのプラグインの形で誰でも利用できるようになっているそうです。で、筆者はLogic Proのユーザーではありませんが、マスタリングスタジオの知人を頼って聴き比べてみました。

結論から言えば、24bit/96kHzソースとAAC256kHzの区別は極めて困難でした。ラージモニターが入ったトップクラスのスタジオですから、音の特徴はとても捉えやすい筈なのですが、劣化は皆無と言っていいと思います。厳密に言えば「同じではない」とは思いますが、では「どちらがいいか?」というと、答は言いたくありません。なぜならどちらも優れているからです。

個人的には、なぜ44.1kHzにこだわるのか。48kHzでいいんじゃないか? という疑問があるにはあるのですが、そうした疑問も吹き飛ぶ程度には高音質です。

その後、もう自宅に戻ってからもうひとつテストをしてみました。

Apple Digital Mastersで配信されている楽曲を、TIDALのロスレス(FLAC)配信と比べてみようと思ったのです。TIDALはMQA配信を一部で行っていますが、それ以外はCDマスターをFLACで配信しています。ということでSiAの「Greatest」という楽曲で比べてみました。

applemusic

オーディオ好きならば「ロスレスなんだからFLACの方が音がいい」と思いますよね?

しかしApple Digital Mastersの方が、音像の描き分けが細やかで、柔らかくフワッと心地よい音場。そもそも音圧感も異なり、TIDALが配信するFLACの音はダイナミックレンジも狭く感じました。つまり、ロスレスか、ロッシーかの前に、マスターそのものが異なるようで、詳細な音質評価以前の問題でした。これなら多くの人がApple Digital Mastersの方が良いと感じるでしょう。

ではMQAで配信されている楽曲はどうでしょうか?

Freya RidingsのUnconditionalという曲で比べてみました。この曲はApple Digital Mastersで配信されているとともに、TIDALでは24bit/88.2kHzのMQAで配信されています。

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異なるプレーヤーソフトで再生せざるを得ないこともあり、まったく同じ音質になるわけではありません(TIDALはTIDALのMac版クライアントとROONで試し、Apple MusicはiTunesで再生しています)。しかし、先ほどとは異なり「ほぼ同じ品質と音の佇まい」で聞こえました。

MQAの方が厳密には情報量が多く(音場を埋める空気感がやや濃い)感じましたけれど、それがプレーヤーの違いによるものかどうかまでは判別できません。一方でMQAの場合、おおよそCDと同じぐらい(1.4Mbps程度)と言われていますから、Apple Digital Mastersに比べると約5倍程度の帯域を使うことになります。

あくまで"ストリーミング"用音源として考えるならば

AppleDigitalMasters_WhitePaperPDF

もっとも、Apple Digital Mastersが、すべてにおける"最良の解決策"かと言えば、そうではないと思う部分もあります。Apple Digital Mastersはストリーミング配信で音楽を楽しむ場合のバランスが良いコーデックとして、聴感上もマスターに近い音を効率良くエンドユーザーに届ける手段として、極めて賢いやり方です。

Apple自身、この仕組みの中に組み込まれているSRCやAACエンコーダが漸次、継続的にアップデートされていると話していますが、将来、技術的な進歩によってさらに音質が高くなっていくこともあるでしょう。

一方で、ダウンロード音源(近年はニーズが減っていますが)用としては、完全ロスレスでのマスタークオリティが欲しいという消費者の気持ちもあると思います。ストリーミングではなく、楽曲そのものに対する投資なのですから、なんら欠落することないデータが欲しいというのは当然の想いと言えます。

そんなわけで、ストリーミングでApple Digital Mastersが楽しめるApple Musicというサービス方針には賛成なのですが、ひとつ残念なこともあります。新しくリリースされる楽曲はApple Digital Mastersで配信されていることが多いのですが、名作と言われているような高音質録音の作品であっても、旧作は以前のまま(つまりCDマスターをそのままエンコード)で配信され続けていること。

当然と言えば当然なのですが、いくら「グローバルのトップ100曲のうち70%がApple Digital Mastersで配信されている」とはえ、過去に遡ってまでは高音質なエンコードに切り替わるわけではありません。

せめてアナログ時代の名盤はApple Digital Mastersになってくれないかなぁ(もうなっているものもあるかもしれませんが......)と年寄りは思いますが、いずれにせよApple Digital Mastersは、ストリーミング時代の音楽制作プロセスを見直す良いきっかけになるかもしれませんね。




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