Western Digital傘下のHDDメーカーであるHGSTが、世界初の10TB版3.5インチHDDをサンプル出荷中と発表しました。長期保存用途に向けた業務用モデルで、内部にヘリウムを充填するHelioSeal技術を導入します。価格や仕様、型番やシリーズ名などは現時点で未公表。製品ページには呼称として10TB SMR HelioSeal HDDと記載されています。

また合わせて、HelioSeal技術を採用した8TB版HDDであるUltrastar He8と、HelioSeal非採用での6TB版HDDとなるUltrastar 7K6000も発表。これらのモデルも業務用向けで、大手ユーザーに向けて出荷中の段階です。



なんといっても注目は、世界初となる10TB HDDでしょう。先日シーゲイトが8TBをサンプル出荷したばかりで速くも更新、しかも2TBもという点から、いよいよ厚みが増加したのでは......とも疑いたくなりますが、本記事タイトルにも掲載した写真を見る限りは(若干微妙に見える角度ですが)標準的な1インチ厚のようです。

となると当然、なぜこれだけの容量増加を達成できたのかという疑問が湧きます。これは呼称の中にも入っている、SMRと呼ばれる技術によるもの。

SMRとはShingled Magnetic Recordingの略で、HDDの記録密度を効果的に向上させる技術。Shingleとは屋根に使われる瓦を指すため、日本語では「瓦記録」というインパクトの強い訳語があります(ただし、かえってわかりにくいためか、「シングル(磁気)記録」も使われます)。



この瓦とは、HDD上の磁気記録パターンに由来する名称です。記録密度を向上させるには、HDDのプラッタ上にデータを記録する『トラック』の幅を狭くするのが有効ですが、トラックが狭すぎる場合は書き込む磁界の強度が低下し、正常な記録が難しくなります。

それを防ぐため、記録時だけに限りトラック幅を広くし、前のトラックに対して(ちょうど瓦屋根のように)オーバーラップさせることで、記録ヘッドの幅より狭いトラックを作って密度を上げる、というのが基本的な考えです。

こう表現すると考え方自体は単純にも思えますが、実際の技術的難度は非常に高く、数年前から「記録密度向上における次世代技術」と言われつつも、導入している製品はいまだに少数という状態です。



なお、プラッタ容量と枚数に関するデータは未公表ですが、HelioSeal技術を初めて導入したUltrastar He6の時点で公開しているカットモデル(上図右下)を見る限り、1インチ厚では7枚プラッタでほぼ物理的限界と思われるため、8枚プラッタという線は薄そうです。

ちなみにタイトル写真の周辺にあるアイコン的なものに対する解説は、想定される使用用途。あまり耳にしないCool-to-Cold Storageとはアクセス頻度の低いアーカイブ的なデータ保存用途、その左にあるActive Archiveは頻度は少ないものの、いざという時にHDDにアクセス可能な状態で置いておきたい用途、という位置づけです。

この点からは転送速度や性能より容量を優先した設計と見て取れるため、スピンドルモーターの回転数などは後述する2モデル(7200rpm)より遅い仕様かもしれません。

なお、同機種の製品紹介ページには、「将来すべてのHGSTのエンタープライズ機能を有するHDDはHelioSealプラットフォーム上に構築されます」との記載もあります。業務用モデルに限った話とはいえ、将来的なHelioSeal採用モデルの拡大も合わせてアピールしている点も隠れたニュースでしょう。



Ultrastar He8は、HelioSeal技術と7枚プラッタデザインを採用するHDD。Ultrastar He6の後継モデルです。プラッタ容量は非公開ですが、7枚プラッタという点から逆算すると、後述するUltrastar 7K6000と同程度となる1.2TB前後と推測されます。

容量別ラインナップは8TB版と6TB版の2種で、接続インターフェイスはシリアルATA 6GbpsとSAS 12Gbpsの2種。先述したようにスピンドル回転数は7200rpmなので(容量のみならず)速度面でも高性能な製品として位置づけられます。



ちなみに製品紹介ページでは「HelioSeal非採用の6TB版製品に比べて消費電力が23%低い」点をアピールしますが、これは本機での改良点ではなく、He6から継承された利点。例えば、シリアルATA版同士を比較すると平均リード/ライト時では本機が7.3Wに対しHe6が7.4W、低電力アイドル時は5.1W対5.3Wとほぼ同等です。



Ultrastar 7K6000は、同社の空気充填HDDとして最大容量となる製品。6TBは、先日発表されたウエスタンデジタル製品と同じく1.2TBプラッタの5枚構成で達成します。
回転数は7200rpm、容量構成は6TB、5TB、4TB、2TBの4種。接続インターフェースはこちらもシリアルATA 6GbpsとSAS 12Gbpsの2種です。

また、前モデルのUltrastar 7K4000と比べて、容量(TB)あたりの消費電力効率は30%向上した点をアピールします。実際に消費電力も減少しており、シリアルATA版同士での動作時比較では、本機が9.4Wに対して7K4000が11.4Wと、2Wほど低くなっています。


HDDの容量増加はここ数年緩やかだったものの、今年に入り業務用製品を中心に(プラッタ枚数増加に頼るなど力技感はありますが)かなり加速しつつあります。現在は3.5インチの8TB HDDをサンプル出荷中のSeagateも、対抗となる10TB製品の準備を表明している状態。このペースで競争が続けば、しばらくは各HDDメーカーから容量拡大のニュースが続くのかもしれません。
HGSTが世界初の10TB HDDを出荷開始。ヘリウム充填と瓦記録で3.5インチ最大容量を実現
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