RetroN 5やレトロフリークなど、最近とみに注目が集まっているのが過去のゲームソフトが遊べる「互換機」と総称されるゲーム機たち。過去のゲームソフトが遊べる「互換機」と総称されるゲーム機たち。青春を捧げたレトロゲームはかけがえのない宝物です。思い出のソフトをHDMI出力によるクリアな表示やUSBゲームパッドでの操作など、プレイ体験のアップデートも提供する互換機は魅力ある選択肢に違いありません。

が、互換機について回るのが「エミュレータ」の周辺にあるグレーゾーン。Wii UやPS4など主要プラットフォーム向けであれ「過去のゲームを再び」系サービスには不可欠となっているエミュレータはどのようなソフトウェアで、どこで合法/違法の線が引かれるのか。レトロゲームを心置きなく遊ぶための予備知識を、数回にわたって取り上げてみます。

ゲーム文化の保存と著作権保護の接点にあるエミュレータ


夢のレトロゲーム機として前評判の高い「レトロフリーク」の発売が迫ってきました。ファミコンやスーパーファミコン、ゲームボーイやメガドライブなど、計11もの過去のゲームハード用のソフトが遊べる"神ゲーム機"として話題となり、6月25日に予約が開始されるや、その日のうちに完売。様々なゲーム機の挙動を真似るハード、いわばエミュレータ(模倣)ハードが大人気を集めているわけです。

これほど速やかに瞬殺されたのは、「昔懐かしのゲームが最新の映像環境で楽しめる」動機がまず一つ。ゲームハードは場所を取り、経年劣化が激しく処分されやすい。が、愛着あるソフトだけは死蔵していて...というユーザーが、手持ちの資産を再び、HDMI出力で大型液晶テレビで楽しめる魅惑の環境に飛びつくのは不自然ではありません。

それにも増して大きいのは「エミュレータ(模倣)ハードは違法」「だから、今買っておかないと再販されないかも」という先入観による駆け込み需要でしょう。消え行く家庭用ゲーム文化の保存とゲームソフトの著作権保護。この緊張関係にある2つが激しく火花を散らす接点が「ゲームのエミュレータ」なのです。

「ゲームエミュレータは悪」という社会通念

そもそもエミュレータとは何かというと、他のハードを別のハード上で再現するソフトウェアのこと。一つのマシンが、ソフトによって様々なハードの"模倣"をするわけです。レトロフリークについても複数の基板を内蔵してるとはコスト的にも考えにくく、単一の基板に何種類ものハードに対応したエミュレータソフトを搭載してると思われます。

エミュレータは強力なマシン上で非力なハード向けのソフトを開発するために普通に使われている手法ですし、Mac上でWindowsアプリを動かすParallels Desktopや、Androidアプリを駆動するGenymotionもその一種で、これ自体はニュートラルな存在で善悪はありません。



ただ、90年代後半頃にPCのスペックが向上してゲーム機エミュレータも遊ぶに堪えるスピードで動作するようになった一方で、高速回線の普及によってROMカセットやゲーム基板からコピーしたデータがネット上で違法にやり取りされるようになり、エミュレータ=ゲームエミュレータ=知的財産権を侵害する著作権の敵という悪名に結びついた経緯があります。

個人のパソコン上でのゲームエミュレータの話題がなにかと合法性を取沙汰されがちな理由は、エミュレータ技術そのものではなく、使用しているデータの出所により、ユーザー自身が権利を持たない蓋然性が極めて高いからです。

通常のパソコンにはROMカートリッジを挿し込むスロットもありませんし、現在ではデータの吸い出し器が市販されることも稀であれば、ROMデータの入手先は不法に拾ったコピーと推測が働くでしょう。

カートリッジスロットの有無が分かれ目


では、なぜレトロフリークなどのエミュレータハードが堂々と販売できるのか?理由は「ROMカートリッジスロットがある」ことです。

例えば、海外で先駆けて発売されたRetroN 5もAndroidベースのエミュレータハードですが、ファミコンやゲームボーイといった各ハードごとにスロットが用意されています。そこにROMを挿さないとプレイできない、つまりソフト本体を持っていることが大前提です。

ROMからデータを本体メモリ内に吸いだしてコピーしているものの、それは光学ドライブを持つゲーム機がディスクから内蔵メモリにデータを展開すること本質的に変わりません。カートリッジを抜くとメモリ上のデータも破棄されるのも、著作権侵害の指摘に対する周到な気配りでしょう。

もっとも、レトロフリークはRetroN 5よりも後発な分、一度ROMカートリッジを挿せば抜いても遊べる「インストール」機能が付加価値とされています。その法的な扱いは少々込み入っているので、後日に改めて解説します。

ハードの特許は20年、BIOSなどのソフトは50年の保護


かつてはゲームショップの一角に積み上がっていたファミコン"互換機"の合法性が気になるところですが、こちらは原則でいえばシロ。ゲームハードについて発生する特許権は20年で切れるため、1983年発売のファミコンも2003年には特許権が消滅。任天堂がファミコンおよびニューファミコンの生産を打ち切ったのが2003年だったのもそういうことですが、それ以前に出回ってた互換機はつまりクロ...!?

「ハードの特許は20年で消滅」については続きがあって、BIOS=「CDからデータを読み出す」など基礎部分のソフトはその限りではありません。プレステやサターン以降の光学ドライブを搭載しているハードもこのBIOSソフトウェアを載せています。

BIOSは一種のソフトであり、著作権法に従って守られます。そして企業=団体名義の著作物については公表後50年まで保護。実際、80年代半ばにEPSONがNECのパソコン・PC-9801シリーズの互換機を発売した際にも、BIOSの知的所有権や著作権侵害の疑いがあるとして製造・販売差し止めの訴訟を起こされたことがあります。シャープは自社のX68000のOSやBIOSを2000年に無償公開しましたが、あとに続くゲームハードのメーカーはありませんでした。


そんなわけで、プレステ他の"次世代機"のエミュハードは法的に困難ですし、現状でも実装した製品はありません。例えば2000年に発売されたPS2の場合、いずれ「著作権侵害を回避した他社開発によるBIOS」が登場して法的な問題がクリアされるかもしれませんが、そうでなければ合法モノは2050年まで待つ必要があります。お手元のストック品は、あと35年はメンテをしつつ大切に使ってください。

ゲームのエミュレータやエミュハードは、本体の生産が中止されて滅び去っていくゲーム文化の保存と著作権保護がせめぎ合うホットな話題であり、今回の記事もほんの一端に触れたに過ぎません。以後、何回かにわたってこのテーマにお付き合い頂ければ幸いです。

「RetroN5」「レトロフリーク」など、レトロゲーム互換機比較

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レトロゲーム互換機は合法・違法? ゲームエミュレータを改めて考える 第1回
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