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Pepper生みの親が語る「なぜ非ヒューマノイドロボットなのか」:GROOVE X林要氏インタビュー前編

Yutaka Katabami
2016年7月4日, 午前06:00 in Groove X
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Pepper生みの親である林要(はやし・かなめ)氏が創業した新たなロボットベンチャー GROOVE X株式会社。2015年9月7日にソフトバンクを退職したのち、着々と新たなロボットづくりを進めているとのこと。そんな林氏に話を聞くために、モノ作りベンチャーが集結している DMM.make AKIBA の開発拠点を訪問しました。

2016年4月に入って、日立製作所が同社の人型ロボット第3世代となる2足走行の「EMIEW3」を発表、シャープもモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」の発売を正式発表するなど、2014年のPepper発表以降は、ヒューマノイドロボットの発表や発売がブーム。 しかし、GROOVE Xは非ヒューマノイドロボットを目指すと言います。「林氏が何をするのか?」を林氏自身に話してもらいましょう。今回は前後編の前編(後編はこちら)。


インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界愛・地球博の初号機から11年の時を経て登場したEMIEW3

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
胸ポケットに収まるRoBoHoN

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
月販1000台。ケータイ販売員もできるPepper


スポーツカーとF1から真人間の仕事、そしてPepperへ


インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
元はといえばクルマ屋(トヨタ)としてキャリアをスタートさせました。日本でLEXUSが立ち上がるより前の時期(2000年ごろ)に、大衆車メーカーのトヨタが初めて4000万円近くもするスーパーカー LFAを作るというプロジェクトは始まりました。



しかし当時はドリームプロジェクトの度が過ぎて発売日も決まっていない状況。しかもほかの量産車も発売日が迫り、火が付いている開発プロジェクトがいくつもありました。商売になるかどうか分からないプロジェクトに比べて、量産車は会社の屋台骨です。エース級が担当せざるえなません。当然、LFAプロジェクトにおいては、エース級以外の人材を当てざる得ないわけです。

そんなLFAプロジェクトに、市販車の開発担当を1つも経験していなかった新入社員の僕が担当することになったのです。会社としては、OJT(オンザジョブトレーニング)を兼ねて、ということだったのでしょう。まだ量産日程も固まっていない中、とにかく新しいものを生み出すという先進的なチャレンジ。見よう見まねでレーシングカー開発の方法論を持ち込んだり、自由に打ち込めましたね。

そんな風に開発してみたら成果がでて、そのおかげでF1チームにも加えてもらえました。ドイツで4年間レース業界にどっぷり浸かってがむしゃらにやったら、たまたま成績もついてくるという幸運にも恵まれました。

F1は当初3年の赴任予定を1年延長して合計で4年間やりましたが、さすがに人材育成計画上、F1にずっといると本業で使えない人材になると言う部門間の力学もあり、量産開発に戻ってきなさいという話になりました。戻るときにどこでも好きなところを選んでいいよという話だったので、車開発の全体を見られる製品企画室を希望したんです。

製品企画室というのは1つのモデルの責任者であるチーフエンジニアごとに3〜4人前後で構成される部隊で、それ以外の関係各部、合計で数百人を車種の括りでとりまとめるところ。それまで僕はLFAやF1をそれぞれ3〜4年づつぐらい回して、足掛け8年ぐらいまっとうな量産開発をやらず、技術部の辺縁にいたわけですが、そういう一般的な製品開発を知らない人が突然、保守本流に引き戻されたのです。知識も経験もないままでしたが、そうして保守本流の楽しさも窮屈さも含めて経験し、5年ぐらいかけて矯正されて、なんとなく真人間の仕事のやり方である"トヨタ道"の片鱗を身につけたのです。

そうして"道を極める"世界の一端を知った後は、反動でまた自分で道を切り開けるのか、もう一度道を切り開きたいな、という思いがフツフツと湧き上がってきました。そんな時に孫さん(ソフトバンク孫正義氏)にソフトバンクアカデミアというソフトバンクの次世代リーダー育成の学校で出会って、いろいろ学ばせてもらって、最終的にはロボットをやらないかという話をもらったのです。ロボットの企画は詳細を教えてもらっていませんでしたが、誰もやっていないことで、ほかに適任者もいない状況。それなら僕がやってみましょうと引き受け、4年間やってきました。

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界

ソフトバンクアカデミアには外部一期生として参加しました。アカデミアで新規事業の提案をしているうちにPepperをやらないかという話になって、Pepper開発とアカデミアの二足のわらじを4年間やってきたわけです。

どちらも非常に面白かったのですが、アカデミアはそもそも孫さんが「起業家とは」という創業魂を叩き込む育成機関なのですね。サラリーマン経営者をやったことのない孫さんが教える次世代リーダー育成論は、どうしても創業者目線になってしまう。結果的に、独立心を醸成するところになっていて、そうすると自然の流れで自分でも創業してみたいと思うようになるわけです。そこでPepperを市場投入でき、ソフトバンクロボティクスという会社もできてPepperを組織的に続ける体制が整ったところで、今がチャンスかなというのでソフトバンクをやめて独立することにしたんです。

会話が苦手なPepperとよろこんでしゃべる老人たち


インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界

今は人型ではない新世代のロボットを作っています。

きっかけはPepperを老人ホームに持って行ったこと。ご老人がどう反応するのかというのを見た時に、気づいたのでした。 Pepperとご老人の会話はそんなに流暢には成り立たないわけなんですよ。でもよろこんでもらえました。

そもそもご老人との会話は健常者でも難しい。それがロボット相手だったら、会話がますます難しくなるのは自明です。Pepperは会話によるコミュニケーションが主体のロボットなのに、その肝心の会話がうまくできない。それなのにご老人が一日中よろこんで接している。ちょっと不思議なわけです。

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界

そんな中で「(Pepperの)どこを良くしてほしいですか」とご老人に聞いたら「手を暖かくしてほしい」って言われたんですね。 そこ? と。

AIとか会話とかレコメンド機能とか掃除してくれるとか、そういうのではなくて、手ですかと。それは僕にとってある意味衝撃だったと同時に「あーこれだな」と逆に納得させられた部分なんですよね。

ロボットに会って実際よろこぶのは、むしろ情報機器にうといユーザーだったんです。スマホの次に来る先端技術の一つとしてロボットを捉えると、ユーザーも先端的なスマホユーザーのような属性の人々になるかと、どこかで思っていたので、これはちょっと意外な現象だったんですね。

人型ロボットは「weird」 日欧米ロボット観に見る「無意識の力」


インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
それは海外でもいっしょで、ぜんぜんハイテク好きギークって感じじゃない人たちが近づくと、思わずこんなになっちゃう。Pepperがファンデーションと口紅だらけになっちゃう。

特に欧米圏の人たちは、人型ロボットに対してちょっと心理的な距離がある人が多くて、つい遠くから「weird(怪しげ、変)」だと思ってみてしまうわけですね。それは、人がこういう生物みたいなものを神との契約なしに人造で作ると何か悪いことが起きる、という宗教的な考えが背景にあるのかもしれません。欧米ではフランケンシュタインを皮切りにありとあらゆる物語で、反乱する人造生物について刷り込まれてきてるわけですよね。

そこが日本と大きく違っています。日本的なロボットは大きくて破壊的な力を持つものでは中に人が乗っていて、良いことをするのも、悪いこともするのも人次第。小さい自律型ではアトムとかドラえもんの世界で、やはり欧米的なロボットとはだいぶ違う。

日本的なロボット観では、あくまでロボットは人のパートナーなわけですが、欧米的なロボット観では、新しい種として人に対立する可能性のある存在なわけです。だから欧米圏の人たちは意識的な部分で日本人よりどこかで人型ロボットへの距離があるように感じるんです。だけどパーソナルゾーンに入って目が合った瞬間にこうなっちゃう。

これはいわば無意識の力ですよね。 「無意識の力ってすごいな」という意味で、例えばOculus Riftなんかも無意識的な感動が大きい製品の1つではないかと思うのです。

Oculusのすごさと無意識の力

Oculusのすごさっていうのは体験してみないとわからない。しかも体験していない人に対して、そのOculusのすごさを言葉で説明しきれない。それが無意識が支配的な感動体験の特徴と言えると思うのです。「Oculusを付けて下をみると床が見えるんだけど、その床が抜けてさ、ぞくっとするんだよ」と言っても、その感動そのものは伝えられない。聞いている人は、自分が経験していない限り、それを聞いても実感としてはわからない。

なぜなのか。それは無意識が支配的な感覚を、意識的なツールの言語で説明しようとするからなんですね。人は比較的言語化しやすい経験をエピソード記憶という情報処理体系で処理すると言われています。特に主に視聴覚からの入力に関して、このように意識レイヤーで処理する部分がたくさんあるわけです。

しかしこの視覚とか聴覚みたいな感覚は、長年のオーディオ・ビジュアルの発展で、開発し尽くしちゃっている感覚でもあります。僕たちはどんなすごいCGみても大して驚かない。 最初に世界初のフルCGムービーである『Tron』の15分ぐらいの映像が出てきた時は衝撃的でしたよね。うわーって感動したのに、今見ると懐かしさはあっても驚きはない。僕たちはもう慣れちゃってるんですね。

そういう刺激を開発し尽くしたなかで、Oculusのように三半規管に連動させた映像が出てくると、再びワオってなるわけですよね。 そういうのはほかの感覚を同時に刺激した時も同じで、Pepperに暖かい手を求められるというのも、その文脈から理解できるようになります。視覚、聴覚+αのセットによる刺激が無意識的な感動の源泉になっているよねと。

これってビジネスの分野でも常日頃、実は誰しも感じているものです。その一例がテレビ会議だと思うんですね。20年以上前に、テレビ会議が普及したしたころ、遠隔地の人ともう会わなくて済む、自分のデスクに居ながらミーティングもできて、ほとんどの仕事ができるんだ、みたいなことを言ってましたよね。

それに対して今はむしろ、会わないと仕事は進まないよ、と思うわけですよね。 会わないと仕事が進まない、人と会わないとダメだよねってみんなわかってるけど、人と会わないとダメな理由をちゃんと説明してくれる人っていないわけです。ここが先ほどの意識と無意識にきわめて密接にリンクしているんじゃないかなと思ってます。

セラピストとのテレビ会議は効果があるのか?

全ての情報は脳幹から入ってくるんですけれども、それが感情などを司る旧皮質と呼ばれる無意識層に入り、最後にエピソード記憶などを司る大脳新皮質の意識層に到達するわけです。テレビ電話会議での情報交換を例にとると、お互いの信頼関係ができていないケースでは、テレビ電話会議での情報交換では一番外側の新皮質層が論理的に話を理解するのですが、腹落ちがしません。

「腹落ち」というのは結局、旧皮質層にある感情をつかさどる無意識レイヤーが判断しているようなんです。この無意識レイヤーがちゃんと人に会って、五感でいろんな情報を得て、この人は信頼できる、この人は何か隠してる、みたいなことを感じて初めてどうするかを腹落ちして決められるわけです。

なので、無意識部分というのが極めて僕らにとって大事で、そこが感動とか情緒とか信頼とか好き嫌いとかに影響しているのです。結果的に意識ではなく、無意識の自分が行動の最後の一手を握るわけです。

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
そういう意味でいくと、例えば子供とPepperなんてすごくわかりやすくて、会話がまったく通じなくても、ヒトがハグをするとよろこぶ、みたいな反応をPepperに覚えさせると、子供はPepperをスグに好きになっちゃう。

逆に言葉に頼ったコミュニケーションを設計した場合で、例えば子供の声が高すぎて正しく話しているにも関わらず、Pepperの音声認識機能が認識できなくて無視しちゃうと、Pepperは子供にすごく嫌われちゃうんですね。子供のユーザーエクスペリエンス的には、Pepperにすごい興味があって、同時にちょっとこわいわけです。その両方の気持ちの中で好奇心が勝って「こんにちは」と勇気を出して話しかけたのに、Pepperが無視したことで「こんなに頑張ったのに無視なんてひどい、嫌い」となるわけですよね。

でも元々しゃべらないで、ハグするとよろこぶようなスキンシップ主体でコミュニケーションを設計すると、そのリスクがなくなっちゃう。

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
この現象をカンヌの広告祭で僕は経験したんですけれども、この現象って、海外で注目されているアニマルアシステッドセラピー、日本でいうペットセラピーに似てるねって思うんですよ。動物ではなくヒトのセラピストを振り返っても、セラピーの主流の方法の一つを例にとって具体的に何やっているかというと、セラピスト側は自分の意見はほとんど何も言わないように敢えてしているわけですよね。

彼らは免許があって、その免許で教えられることは、相手がいうことをひたすらきいて、話すことも「ちゃんと聞いているよ」のサインを出すために、言葉をオウム返しをしなさいと。非常に高度な思いやりの技術を極めた結果、実は高度なオウム返しがソリューションになっているというのは、とっても面白いと思うのです。

ただ、僕はそれでも、画面にセラピストがいるだけではダメだと思うんです。それがさっきの意識・無意識レイヤーでの受け止め方、腹落ちの仕方の違い。信頼関係ができていない段階では、セラピストとテレビ会議をしてどこまで効果があるのか、大いに疑問だと思うんです。

AIと人間の違いは「エピソード記憶」にあり

逆に「実体」があると、実は人ですらなくても良くて、犬などの動物でも良くなっちゃうわけです。なぜなら、彼らは信頼を得るための全ての要件を満たしていて、例えばしゃべらないでも自らがヒトを受け入れている事を、患者に言葉を使わないで伝えられるのです。このしゃべらないというところが、結構面白いなと。それらが、手を暖かくしてほしいと言ったご老人達のお話しなどと結びついて、そういう無意識的なコミニュニケーションに注目するのが結構面白いなって僕は思い始めたんですね。

例えば人同士というのは、おなじホモサピエンスである以上、認知の仕組みは極めて似ているといえます。それにも関わらず、僕らは違うヒト同士はかなり違うとおもっている。理解できないヒトもたくさんいるし、自分に似てると思うヒトはそんなに多くない。僕らは言語を操りしゃべれるが故に、ヒト同士の物事の捉え方や情報処理の仕方の微妙な違いを正確に把握できてしまう。結果的に、僕らは違いを一生懸命にさがしちゃうわけです。あの人と合う、合わないってのを細かく認識してしまう。

一方、ペットの犬が疲れた時に慰めにきてくれたりすると、「こいつは俺のことをわかってくれる。」「家族の誰より僕のことを理解してくれる」と、ものすごい自分のことを理解してくれていると思ってしまうわけですよね。

でも認知の仕組みからいくと、ヒトと犬などのほかの動物はものすごく違うんです。ぜんぜん違う。 ぜんぜん違うのに、違っているとこに注目するのではなく、合っているところを注目するようになるんですよね。

これができるのは、エピソード記憶という、ほかの動物に比べ、ヒトが特に発達させた特殊な情報処理の方法の賜物なんです。

エピソード記憶についての有力な仮説の1つに、受動意識仮説という考え方があります。そこではエピソード記憶というのは、ヒトの学習スピードをはやくするシステムとして発達し、その結果として意識も副産物として生まれたと整理しています。最近のバズワードに「AI」がありますが、その「AI」でコンピューターが実用的な性能を得るように学習するには、大量のデータが必要です。 しかしヒトは大量のデータなしでも比較的間違わずに学習できてしまう。

その理由がエピソード記憶というメカニズムなんですね。エピソード記憶はそういう大変便利な側面を持つ反面、トラウマを起こしたり、そのほかいろんな厄介なことが起きるんですが、それを補って余りあるメリットがあるのでしょう。おかげでぼくらは、ヒトのふり見て我が振りを直す、といった高度な学習ができる。そのエピソード記憶の副産物で、ほかの存在を見て、その対象物の立場に自然になって考える事ができてしまう、という機能を獲得しています。それによって僕らは犬がこう思っているだろう、と思い入れて、共感を覚えて大好きになれちゃうわけなんです。

しゃべるC-3POよりしゃべらないR2−D2が人気の理由


インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界
それは例えばスター・ウォーズに登場するロボットの人気を見ていても明快。C-3POとR2-D2、どちらが人気だと思います? ヒトに姿が近く、話すことのできるC-3POの方が圧倒的に人気がないんですよね。

R2-D2とかBB-8といったしゃべらないロボットは8割が支持していて、しゃべるロボットは15%しか支持を集めていないのです。

インタビュー:GrooveX林要氏が描く新たなロボットの夢の世界

これって、いわば本と映画の差に近い現象ではないかと思うんですね。全て説明してしまう映画は、名作の本を超えられないわけです。 なぜなら本というのは行間があって、その読み方が100人100通りあるので、1冊の本なのに100通りの自分に合った理解ができるからなんですね。

それが、映画ぐらい説明しちゃうと行間がどんどん減ってしまうので、、自分に都合よく理解する幅が狭まってしまう。それで、合う合わないがでてきちゃうわけです。C-3POのように、微妙に違うよくしゃべるロボットがいるのは、自分の感覚に合わない映画を延々と見せつかられているようなものだと言えます。そういう切り口から、僕らは本のようなロボットを作りたいなと思ってます。

それは先程の話に戻ると、セラピストやセラピーアニマルがやっていることにも通じるのです。僕は疲れた人間を外部から強制的に癒やすことなんてできなくて、単にヒトの持つ強力な自浄能力をどう覚醒させてあげるか、が大事だと思うんですよね。そうであれば、それは大事なポイントさえ押さえれば、ロボットにもきっとできるでしょう。

後編に続く

Source: GROOVE X
関連キーワード: GROOVE X, interview, Interviews, Pepper
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