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Androidだから実現──新NuAns NEOのおサイフケータイ対応のすべてを聞いた:モバイル決済最前線

初代では断念していた

鈴木淳也(Junya Suzuki) , @@j17sf
2017年2月23日, 午前10:00 in payments
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アクセサリメーカーによるスマートフォン市場初参入というだけでなく、当時リリースされたばかりの「Windows 10 Mobile」を採用したSIMフリー端末として話題になった「NuAns NEO」。

その後継機「NuAns NEO Reloaded」は前モデルからスペックアップしているものの、前モデル用のバックカバー等のアクセサリをそのまま流用できたりと、アクセサリメーカーならではの発想が随所に光る製品だ。また、今回のモデルではOSに「Android 7.1 Nougat」を採用しており、前モデルでは対応が難しいということで搭載を断念した「おサイフケータイ」対応が行われているという特徴がある。

「NuAns NEO Reloaded」の機能や価格など、詳細情報は本誌の別記事を参照いただくとして、本記事ではこの「おサイフケータイ」対応に焦点を絞る。「SIMフリーとして携帯キャリアの流通に直接乗らない形での端末では初」(FeliCa Networks)となる同機能対応にまつわる苦労のほか、実際の開発プロセスなどをトリニティ代表取締役の星川哲視氏にうかがった。

おサイフケータイ対応SIMフリー端末ができるまで

──発表会では11月から新NuAns NEOの開発をスタートしたと説明していました。フェリカネットワークスの相澤浩氏氏も「驚きの開発スピード」とおサイフケータイへの対応を賞賛していました。実際に発表までの3ヶ月程度でおサイフケータイ対応を実現したのでしょうか?

星川氏:開発がスタートしたのは11月というか10月後半でしょうか。交渉自体は前モデルの初代NEOの時代から行っていて、当時は「(Windows 10 Mobileでの対応は)無理」という回答でした。それが今回、Androidなら可能ということで、「できるならやりましょう」ということになりました。実際、開発そのものよりも事前の交渉にかかる手間が大きく、まずは「機密保持契約(NDA)」を結んでから交渉がスタートします。通常、大きな企業であればNDAの内容を精査してここで流れが止まってしまうのですが、われわれは小さな企業なのでその利点を活かし、僕が「やりましょう」ということで契約書が来た時点でサインをしてしまう手順でスピードアップを図りました。仮にですが、同じSIMフリー端末を提供するメーカーでもHuaweiなどは同じようにはいかない可能性があります。

もう1つは作業手順です。事前に発売日を決めてしまうことで、お尻に作業を合わせていきます。先方の言われるままに積み上げでスケジュールを組まれると、いろいろ都合が重なって「(本来は5月発売予定なのに)年末商戦向けの商品?」ということにもなります。われわれはアクセサリメーカーとしての経験で、金型を作るときも最初にまず「30日」とかいわれます。具体的にスケジュールを確認していくと実際に動いているのは削りや調整で合わせて7日間程度です。残りは成形機の稼働状況をみて他社との兼ね合いなどで「相手には1ヶ月と言っておけば問題ない」とされるわけです。こういう過程を経てわれわれは中国企業とずっとやってきたので、この手順をもって作業期間を短縮したことに驚かれました。


トリニティ代表取締役の星川哲視氏。手に持つのは新素材のコルクとデニムを組み合わせた新型のNuAns NEO [Reloaded]

──今回、開発でおサイフケータイにかけた労力の比重は全体のどの程度でしょう?

星川氏:今回はデザインを変えないという方針だったので、この部分を詰めるというプロセスがあまりありませんでした。一方で内部的には難しいことをやっていて、まず開発をやっている(中国の)会社も変わっていますし、中身としては3Dのデータを全部作り直している。細かい部分を入れれば、ゼロではないけど1から作り直したといえる程度には変わっています。労力という意味では、やはり大手の(カメラセンサーを提供する)ソニーや(液晶を提供する)シャープ、(割れにくい曲面ガラス「Dragontrail Pro」を提供している)旭硝子といったメーカーとの交渉で部材を入手できるかに苦労しています。先方からすれば、1万や2万というのは微々たるオーダー数なので、これで依頼を受けてくれるかどうかが問題となります。

おサイフケータイの部分では、「実現性の面で自分たちでは決められない」という問題があり、心の重しとして3割程度の負担があったと考えています。今回、交渉自体はサービスを提供するFeliCa Networksを通して行っていたのですが、(電子マネーなどのサービスを提供する)コンテンツプロバイダ各社など関係者が多数存在していることが難しい部分です。例えば、今回「おサイフケータイ」対応をうたってはいますが、発表時点ではまだ利用可能なサービスは明示していません。こういった部分です。

──おサイフケータイ対応には、いわゆる「FeliCa検定」という試験が存在しますが、これ以外にもJR東日本の「モバイルSuica」のようなサービスの検定をパスする必要があるということでしょうか?

星川氏:コンテンツプロバイダ各社はアプリのチェックを行うだけで、ハードウェアのテストは行っていないので検定と呼べるほどではないでしょう。逆にFeliCa検定ではアプリ自体のチェックは行わないのですが、基本的にはFeliCa検定をパスすれば問題ないと考えています。過去の例でいえば、フェリカネットワークス側の説明では「スマートフォンでFeliCa検定を通ったのに、その先で落ちることはない」ということで、大丈夫でしょう。昔はいわゆるガラケーとか、いまでいうガラホみたいな画面解像度やUIがいろいろ違う機種の場合、コンテンツ側のアプリを修正しなければいけないことがありました。これがFeliCa検定を通っても、その先で落ちるというケースです。スマートフォンではそうした問題が少ないため、むしろわれわれの負担としては最初の交渉部分のほうが大きかったです。

──交渉が大変とのことですが、フェリカネットワークとは別に個別にコンテンツプロバイダ各社と交渉を行ったということでしょうか?

星川氏:フェリカネットワークスがすべての窓口となりますので、交渉そのものはそこで完結します。ただし今回は特別で、一般にはフェリカネットワークスを通すだけでコンテンツプロバイダと直接話すことはないようなのですが、(SIMフリー端末メーカーとして)初めておサイフケータイに対応したということを鑑みて、個別にプレゼンテーションを行いました。その時点では端末情報がまだ出ていないうえ、われわれの会社自体も零細企業で知名度がないため、まずはコンテンツプロバイダの方々に理解してもらう必要があります。やはりサポート関連や修理対応で先方に安心いただく必要があり、説明や要望をいただきにうかがうというわけです。サポートに関して1つ面倒なのは、お金の入った状態で修理対応が発生した場合に問題が発生します。電子マネーですので、やはりそのあたりの処理対応でしょうか。


今回の最大のセールスポイントの1つであるおサイフケータイ対応

──過去にキャリア端末でもおサイフケータイ対応を行っていないメーカーの製品は多数ありましたが、説明によれば「販売台数からみたコスト吸収」「開発期間の長さ」を主な理由に挙げています。前者について、コストと販売台数のバランスでおサイフケータイ対応を悩まれましたか?

星川氏:そうですね。開発コストのほか、初期費用からランニングコスト、そしてサポートですね。特にサポートは予測がしづらいうえ、端末自体が固定費となります。また100万台、あるいは10万台や20万台売れるといえればいいのですが、実際にそこまでではないとすると1台あたりにかかるコストはどうしても上がってしまうのは確かです。とはいえ、すでに発表会でもお話したように「Apple Pay」が出てきたのでやってみたかったというのもあります。実は僕自身はおサイフケータイを使ったことがなく、実際に使っている弊社のスタッフは「便利だよ」と。使われている皆さんのお話を聞く限りではライフスタイルの一部になっているようですし、僕自身はSuicaのオートチャージ機能を使っているので、これがなくなって毎回切符を買ったり、チャージしにいくと面倒だなと。現状、Huawei、ASUS、FreetelがSIMフリー市場の7割くらいのシェアを持っているわけですが、仮にキャリア端末の世界でおサイフケータイに慣れ親しんだ人がSIMフリーの市場へとやってくると、再び小銭や札を扱う世界へと引き戻されることになります。「NuAns」の語源となった「New Answer」という新しいライフスタイル提案を考えれば、初代NEOのContinuuumのように、目玉機能の1つとしておサイフケータイに挑戦したかったなと。

──今回のReloadedでは「すべてをこれひとつで」というキャッチフレーズがありますが、やはりAppleのiPhone 7の日本上陸を意識しているのでしょうか?

星川氏:そうですね、それも参考にしつつ。NEO Reloadedのおサイフケータイはある意味でフル機能ですから、使えない場所がありません。いま、僕自身はApple Payを「Apple Watch」で使っているのですが、沖縄みたいに楽天Edyしか使えない場所があったりで、必ずしもすべての場面に対応できるわけではなかったりもしますので。台数が出ないとコスト的には厳しいのですが、台数がそこまで出なかった前回に比べると、今回はまだいけるんじゃないかと目標としてはかなり上を狙っています。SIMフリー市場の5%が4万5000円以上の端末というデータがありますが、これはけっこう大きいと考えています。市場規模が300万から350万台で、携帯電話市場の1割強ですから、そのうちの5%としてもけっこう戦える余地があるんじゃないかなと。

──他社のSIMフリー機と戦ううえでおサイフケータイ対応はセールスポイントになると考えていますか?

星川氏:2月20日の発表会では「2016年中にキャリアから販売されたAndroid端末の8割の機種がおサイフケータイ対応」という話がありましたが、搭載台数自体は多くても実際に使っている人がどれだけいるかという話になると難しいと思っています。とはいえ便利な機能ではあるので、われわれの端末でより便利な体験をしてほしいです。これがファーストデバイスでもかまいません。セールスポイントというだけでえなく、サイトを通じての啓蒙も行っていきたいと思っています。

おサイフケータイ対応にあたってロゴの使用許可をドコモとの個別契約で得ていますので、活用していきたいところです。われわれが開発したもので初代NEO向けに「TriCa」というアプリがありますが、これが非常に便利で、カードを端末内に収納しておくとバックグラウンドで自動的にデータを吸い出してCSVファイルなどで出力が可能な仕組みになっています。通常、カードで直接履歴を見る場合には件数が限られているほか、別途印字やインターネット経由での履歴参照が必要になりますので、これがすべて自動化されます。ぜひAndroid版も提供していきたいと考えています。


発表会で紹介されたオリジナルアプリ「TriCa」。バックグラウンドで電子マネーのカード情報を呼んで履歴を抽出できる

──実際の開発体制について少し教えてください。今回もソフトウェア開発は(初代NEO同様に)中国の会社に依頼したのですか?

星川氏:NDAで詳細は言えないのですが、(おサイフケータイについては)国内のハードウェアベンダーとソフトウェアベンダーに開発を依頼し、実装は中国のデザインハウスでやっています。つまりAndroid全体は中国で、そこにNFCまわりとFeliCaのミドルウェアをマージしたもので組みます。

──Androidはセキュリティパッチも含め、適時中国側でアップデート対応を行っていくのですか?

星川氏:配信そのものは大変ではないのですが、そこで発生するテストのプロセスが大変です。Google側の縛りもあり、そこで発生するコストもあります。そのため、月例パッチを100%確約できないのですが、「可能な限り早く」とさせていただいています。この作業自体はおサイフケータイとは別で、OS側の(マイナーバージョンを含む)バージョンが上がった場合にはフェリカネットワークス側のチェックが必要になり、問題ないと判断した段階で配信が可能になります。この点がすぐのアップグレードをお約束できない部分でもあります。AndroidをできるだけNexusなどの素に近い状態で提供しているのも、おサイフケータイを除けばできるだけカスタマイズを少なくして、アップデート要求に素早く対応することが狙いです。

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筆者自身もAndroidでのおサイフケータイ対応について細かく話を直接メーカーから聞いたのは初めてなので、いろいろ勉強になる部分があった。文中でもあるように、対応端末の多さと比して実際の利用率はまだ低水準に留まっている問題があり、これはApple Payでも同様になると筆者はみている。一方でインフラ整備は現在もなお進んでおり、今後は小売店でのPOSの更新時期も重なって複数の電子マネーや決済手段をサポートする場所が増えてくるだろう。
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