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タッチするだけがモバイル決済じゃない。もう1つのMWC 2017:モバイル決済最前線

オンライン取引と対面決済の中間のようなサービスも

鈴木淳也(Junya Suzuki) , @@j17sf
2017年3月16日, 午後12:30 in Mwc2017
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2月27日-3月2日まで4日間の会期で開催されたMobile World Congress 2017。今回はもう1つのMWCの姿を紹介する

Mobile World Congress(MWC)といえば世界最大のモバイル業界イベントだが、それが認知されたのも比較的最近の話だ。当初GSM World Congress(後に3GSM World Congressに改名)という名で開催されていたことからもわかるように、もともとはGSM規格でモバイルネットワークを運用する、主に欧州の携帯キャリアらが集まって開催していた地域イベントに近いものだった。

それが規模の拡大に合わせて南欧のリゾート地であるカンヌからバルセロナへと会場を移し、さらに手狭になった旧会場から二度目の引っ越しを経て現在のバルセロナ中心部から若干離れたFira Gran Viaという場所に落ち着いている。

主催者のGSMAは携帯キャリアらが集まる業界団体であり、当初のMWC(GSM WC)もキャリア連合関係者らが集まる年次会合的な意味合いが強かったが、モバイルがITの中心となるにつれて「モバイル業界関係者皆が集まるイベント」となり、メーカーやサービス事業者などさまざまな会社が人々が交流する場となっていった。

バルセロナに会場を移した2007年以降はiPhone発売なども相まってスマートフォンブームが巻き起こり、特に2010年以降は「スマートフォン新製品発表の場」としても注目を集めるようになった。だが現在、スマートフォン需要は一巡しつつあり、こうした新製品発表の場としてのMWCの役目は薄れつつある。そして2017年には本来のMWCの姿ともいえる「5G」など次世代通信技術が大きな盛り上がりを見せていた。


MWCの原点に立ち返れば、GSMAの参加メンバーらが通信の次の可能性について模索する場でもある。GSMAではMWC以外の大小さまざまなイベントを世界中で適時開催しており、筆者の領分とする「NFC」「決済」「インフラ」といったサービスをカバーすべく模索している様子がうかがえる。現在はすでに開催されなくなった過去のイベントとして、NFC World CongressやMobile Money Summitといったものがある。

また、これらイベントの一部はMWCとは別の形態で同時期にバルセロナで開催されていたりするので、興味ある方はMWCのメイン会場を離れて体験できる。今回は「携帯端末」や「次世代ネットワーク」といった一般的に読者の方々が目にされる「表のMWC」とは異なる、こうした筆者視点での「裏のMWC」について最新トレンドを少しレポートしたい。

タッチするだけがモバイル決済じゃない

モバイル決済といえば「おサイフケータイ」や「Apple Pay」のようなNFCを使った「タッチで決済(Tap and Pay)」の部分に注目が集まりがちだ。

だがApple PayだけをみてもNFCを使う「対面決済」のほか、「アプリ内決済」「ブラウザ上での決済」といったオンライン通信経由での決済方式がサポートされている。現状はApple Payの決済のほぼ8-9割程度が対面決済といわれているが、将来的により成長が見込まれるのはオンライン決済の側、今後10年先を見据えて決済トレンドの移り変わりに注視してほしい。

MWCにおける決済トレンドもすでに"次"を見据えた動きをカバーしつつある。昨年2016年のMWCは「ウェアラブル」や「IoT」など携帯電話やスマートフォンを使わずに決済する方法についての提案が数多く行われた。実際に英国で導入されているリストバンド型デバイスを使った決済方式「bPay」のデモストレーションなども紹介されていた。

今回のMWC 2017で注目を集めていたのは、こうしたデバイスよりも各種サービスと決済を組み合わせた「チャットボット(Chatbot)」による対話型決済システムだ。

銀行の顧客窓口システムをチャットボットで置き換える仕組みは、2016年10月にラスベガスで開催されたMoney 20/20での米Bank of Americaの事例をすでに紹介している。これを他のBtoCサービスにまで拡大したのが今回のポイントとなる。現在、こうしたチャットボットのインターフェイスに利用されているのはFacebook Messengerなどのメッセージングサービスが主流。Facebook同様、チャットボットのフレームワークを発表しているMicrosoftはSkype、LINEは自社のLINEサービスそのものを利用していたりする。

だが実際にチャットボットとのやりとりで交換されているのはテキストや画像、簡単なメニューのような項目選択であり、特定のプラットフォームやデバイス、メッセージングサービスに依存するものではない。そこで今回MWCでフィーチャーされていたのが「RCS(Rich Communication Services)」というインターフェイスだ。


過去20年近くにわたって携帯電話同士の簡易なテキストメッセージ交換手段として活躍したSMSだが、その座をいよいよRCSに明け渡すときが近付いているのかもしれない

"次世代SMS"のRCSでは決済やチケット予約も

RCSとは、簡単にいえばSMSの次世代版とも呼べるものだ。SMSでは128バイトのテキスト文字を指定端末間で交換するという非常にシンプルなサービスだが、番号さえわかっていればどんな端末でも簡単にメッセージが送れる手軽さで根強い人気がある。日本人が考えている以上に世界ではいまだ広く利用が続けられている。

後の拡張やMMSのようなマルチメディアデータの送受信の可能なサービスも登場したが、根本的にはSMSの利用スタイル自体はほぼ変化していない。RCSは今日のMessengerのようなメッセージングサービスに近い仕組みを業界標準として実装すべく、GSMAなどを中心に過去10年近くにわたって研究開発が進められてきたもので、2016年11月に同団体によりUniversal ProfileのRelease 1が発行された。

一方でRCSの実装は少しずつ進んでおり、すでに世界各地の携帯キャリアでサポートが行われつつある。米Googleは2015年9月にRCS関連の技術を開発するJibe Mobileを買収しており、昨年2016年末よりGoogle Messengerの一部ユーザーへの導入を開始している。流れからみて、今後こうした対話型インターフェイスにおけるサービスはRCSを念頭に開発が進んでいくことになると思われる。

具体的にRCSでどういうことが可能になるかは、MWCの会期で併催されたNetwork 2020のセミナーでのVirgin Trainの例がわかりやすい。

欧州のターミナルで列車に乗ったことがある人ならわかると思うが、列車が発着する番線が直前までわからずに右往左往することが少なからずある。遅延や運休も日常茶飯事だ。こうしたとき、状況を確認すべく決まって駅員に多くの旅客が問い詰めることになるが、チャットボットなら適時必要な情報を必要なタイミングですぐに答え、顧客のニーズに対応することができる。モバイルチケットを対話インターフェイスですぐに取り出したり、座席指定もシートマップを確認しながら行える。


Virgin TrainsのRCSを使ったサービスのデモ。QRコードの付いたモバイルチケットの発券のほか、シートマップを見ながらの座席予約も可能


RCSでできること。これまでブラウザや専用アプリで補完されてきた機能の数々が携帯電話標準の機能として利用できる

すでに気付いた方もいるかもしれないが、こうした仕組みは従来までスマートフォンのアプリが担ってきたものだ。これを対話型インターフェイスで置き換えるのがRCSとなる。

「なぜアプリを使わないの?」という疑問が当然出てくるが、アプリはデバイスの種類やプラットフォームなど利用環境に依存する傾向がある。サービス事業者にとってはアプリを通じてきめ細かいサービスを提供できる一方、作り込みにかける労力は多くを要する。ユーザーの特定アプリの利用時間が極端に長く、新規にアプリを入れなくなっている傾向も無視できない。

つまり、ユーザーの選定眼から漏れた多くのアプリ(特に中小サービス事業者のもの)は、ユーザーと対話する機会も得られずに埋もれてしまうことになる。ユーザーにしてみても、買い物する可能性のある小売店が提供するアプリを何十個もスマートフォンにインストールしたくはないだろう。そこでどの端末や環境からでも利用できる仕組みとしてチャットボットの対話インターフェイスにSMSやメッセンジャーが選ばれるようになり、今回のRCSの話へとつながってきている。

生体認証とモバイル決済の"次"

2016年まではMWCでモバイル決済に関するセッションや特別展示コーナーが用意され、GSMAとしてこうした取り組みを積極的にアピールする様子が見て取れた。しかしMWC 2017ではそうした枠がすべて消えてしまい、同分野を活動フィールドとする筆者はどのように取材予定を組み立てるかを思案する必要があった。

そこで「スタートアップ」「FinTech」「チャットボット(AI)」「生体認証」「IoT」「ブロックチェイン(Blockchain)」あたりをキーワードにセッションや展示会の取材対象をリストアップし、適当なものを選ぶことにした。フタを開けてみると「チャットボット(AI)」「生体認証」「ブロックチェイン(Blockchain)」に関するセッションは常に満員御礼状態であり、来場者の関心が決済関連でも特にこのあたりの分野に興味を持っていることがわかった。

このうち、生体認証について少しだけ触れたい。指紋認証に顔認証、虹彩認証と、現在のスマートフォンには生体認証センサーが搭載されているケースが増えており、何よりApple PayはTouch IDという指紋認証を決済におけるトリガーとして中核に据えている。


筆者が関係者に聞き及ぶ範囲では、2017年秋に発売される新型iPhoneの一部モデルではTouch ID廃止の代わりに「虹彩認証」が採用されるという話もあるが、生体認証が依然重要な要素であることには変わりない。

先ほどチャットボットの話をしたが、小売店の中には顧客の購買履歴やリコメンデーションエンジンを組み合わせることで、対話型インターフェイスを利用したオンライン販売を模索するところも出てきている。

例えばMasterCardではサンプルとして、航空会社の予約・購入システムを対話型インターフェイスで実現する様子をMWCでデモしていたが、その最終的な支払いに生体認証を組み合わせる方式を採用している。

航空券を予約し、実際に購入の段階に入ったところで同社のモバイルウォレット「MasterPass」を選択すると、同じスマートフォン内にすでに導入されているMasterPassアプリが起動し、支払いに利用する登録済みのカードを指定できるようになる。この際に、生体認証を利用することで支払いに同意したとみなされる。写真のデモではiPhoneを利用しているのでTouch IDだが、Androidでは指紋認証のほかに顔認証なども可能となっている。


MasterCardのチャットボットを使った航空券予約のデモ。支払い方法にMasterPassを指定すると、あらかじめウォレットに登録済みのクレジットカード情報を使って指紋認証で支払いが行える

オンラインでの生体認証としては、業界団体の推進する「FIDO」が知られており、実際にNTTドコモの携帯電話などに採用されている。

FIDOの最大の特徴は「デバイス認証」を採用している点。1つのサイトにアクセスするための共通のID/パスワードを複数デバイスで使い回すのではなく、デバイスごとに異なるアクセスキーを設定することでセキュリティを高めている。

また、FIDOでは生体認証の利用も想定している。指紋などの生体情報をまとめた"シグネチャ"をサービス事業者が取得することはなく、各デバイス内部に格納されて本人認証を行うときにのみ利用される。

これは非常に興味深い仕組みで、替えの効かない生体情報を相手に渡すことなく、あくまで「デバイス認証」+「生体認証」を組み合わせることでセキュリティを高めているところがポイントだ。「指紋」のような個人情報をクレジットカードやICカード代わりにして決済しているのではなく、生体情報をサーバ側に保存して決済を行う仕組みとは大きく異なっている。

米Visaのリスク&認証製品担当シニアバイスプレジデントのMark Nelsen氏は「生体認証の研究開発を行っている立場ではあるが、完全な生体認証などは存在せず、適時さまざまな方式を組み合わせることが重要だ」と述べている。

生体認証に極度に依存するのは一定のリスクを伴う一方、従来までのID/パスワード方式に比べれば簡易で安全な仕組みが提供できる。そのため、特に対面販売と比べてもセキュリティ上のリスクが高いオンライン取引での利用が今後さらに進むとみられている。ショッピングから決済まで、近年オンライン取引が急速に発展した中国ではこうした問題に悩まされており、特にFIDOのような仕組みの導入が積極的に勧められている傾向がある。


オンライン決済を生体認証などの仕組みを使って簡易に行うFIDOは対応サービスが拡大している。オンライン決済が世界的に見ても進んでいる中国ではその採用例も多い

オンライン決済と対面取引の中間的な仕組みも

また、次の決済のステップとして、オンライン決済と対面取引の中間にあるような仕組みも模索されている。対面でサービスを受けながら、支払いはオンライン経由で自動的に。というUberが代表的なものだが、このほか日本でも昨年2016年夏にデモストレーションが行われた「MasterCard Cafe」もその1つだ。

MasterPassアプリが導入されたスマートフォンを持って、接客要員であるロボットのPepperと会話を進めることで注文が行われる。スマートフォンとPepperはBluetoothで互いに接続されており、最終的にPepperに対して来店者が声で同意すると注文の確定と決済が同時に行われる。これは実際の店舗にモバイルウォレットが導入されたデバイスが持ち込まれることで、それがトリガーとなって一連の決済の仕組みを実現している。


2016年夏に東京で開催されたSoftbank Worldでもデモストレーションが行われたMasterCard。手元のMasterPassを導入したスマートフォンとPepperのペアリングさえ行われれば、後はPepperとの対話だけで注文から決済までが行われる。ある意味でチャットボットの発展系ともいえるかもしれない

少しスタイルが異なるが、無人コンビニとも呼べるAmazon Goも似たような仕組みであり、求められるのは「デバイスを持って出入り口のゲートを通過する」ことだけで、それが決済の"トリガー"となっている。

今後、NFCが"枯れた"技術として磁気方式のクレジットカードや現金に取って代わっていく一方で、より便利な方式としての「オンライン決済」+「対面取引」が広がっていくことになるだろう。

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