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テレイグジスタンスで世界が変わる、 憑依で人は機械の体を手に入れた。動き出すVRの先の未来、5Gの使い方

実現した世界を語り出したら夜が明けるレベル

津田啓夢(Hiromu Tsuda) , @boobyn
2017年5月24日, 午後06:30 in Robot
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遠隔地のロボットを分身(アバター)としてコントロールし、土地に縛られた肉体から自由を得て、あたかもそこにいるかのように動かせる。そんなテレイグジスタンス(Telexistence / 遠隔存在)の世界がいよいよ現実のものになろうとしています。研究のはじまりは1980年代と古くからあるものですが、ここに来て社会実装に向けた取り組みが大きく動きはじめています。

今回、テレイグジスタンス研究の最前線ともいえるCyber Living Labにて、テレイグジスタンスロボットを体験する機会を得ました。取材の模様を動画と文章でお伝えします。




VR隆盛の現在、VR機器とVRコンテンツがコンシューマーレベルで気軽に利用できるようになりました。成長著しい海外VR市場と比較し、国内市場はやや立ち上がりが遅れているといった見方もあるようです。とはいえ、急成長している分野であるのは間違いないところでしょう。

テレイグジスタンスもそうしたバーチャルリアリティの一分野ですが、ことこの分野において日本は先駆者的な立場にいます。提唱者は東大名誉教授の舘暲(たちすすむ)氏で、2017年1月には舘氏を会長に据えた「Telexistence株式会社」が設立されました。

▲写真左から舘氏、富岡氏、フェルナンド氏、佐野氏

Telexistence社は、商社出身の富岡仁氏、舘氏の教え子で慶応大学院メディアデザイン研究科のチャリス・フェルナンド氏、元FOVEの技術担当である佐野元紀氏らで創業したスタートアップ企業です。5月18日、KDDIが「KDDI Open Innovation Fund」を通じ出資を発表し、資金的な後ろ盾になりました。Telexistence社では、あとわずか数年でテレイグジスタンス技術を使ったロボットを商用化する計画です。

ちなみに、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の予測では、国内ロボット関連産業は2020年にも2.9兆円規模になる見込みで、2035年にも9.7兆円にまで拡大するとしています。テレイグジスタンス技術はこれから競争激化が見込まれる分野ではあるものの、ロボット産業の発展に貢献するであろう技術といえます。



VRは仮想空間を現実としていかに認識させるか、に比重が置かれています。テレイグジスタンスは遠隔地のロボットを制御し、その場所に行かずとも時空を飛び越えて現実に影響をおよぼす、そんな技術です。

それは、ドラえもんの「どこでもドア」がなくとも同じことが実現できうるテクノロジーです。遠隔地のロボットをコントロールするといっても、単なる遠隔から操作するという意味ではなく、自分の分身がそこにいるという存在感が鍵になります。技術でそれを解決するためには、視覚だけでなく、聴覚や触覚などをいかに遅延なく相互に伝達するかが重要です。



パソコンやスマートフォンの普及やネットワークの高度化により、書面などのデスクワークはもはや会社の机に向かわなくとも行えるようになりました。社会にテレイグジスタンス技術が溶け込むと、同じように人がそこにいなければならなかった作業が遠隔地から行えるようになります。

もしかするとこれにより、産業の構造が大きく変わる可能性もあります。それはなにも危険な作業をロボットが肩代わりする、というだけの話ではありません。より賃金の安いところの労働力を使えば、テレイグジスタンスロボットによって、工場のある地域の人が働くよりもコストを抑えられるかもしれません。

また、世界中の時差をうまく使えば、24時間稼働する工場なのに各国にいる昼間勤務の人員だけで工場運営が実現するかもしれません。さらに、年を取って少し身体が衰えてきたとしても、それをロボット側が補正すれば仕事を続けられる可能性だってあります。



仕事を離れてより身近な話をすれば、何時間も飛行機に乗らずとも、ロボットを介して世界中を旅できるかもしれません。雪を見たことがない地域の人に、豪雪地域の雪かきをお願いしたら楽しんでやってくれるかもしれません。テレイグジスタンスで釣りをして、釣ったものだけ自宅に届けてくれないかな、とか(余談)。

といったように、夢を語り出したら夜が明けるレベルで面白いのがテレイグジスタンス技術です。

加えていうと、ロボットの発展という面でもテレイグジスタンスは貢献する可能性があります。テレイグジスタンスは人の意識がロボットに憑依するかのような技術で、少し見方を変えれば、ロボットに人というものを教えこむ方法でもあります。



もし、テレイグジスタンスによって自然に人の動きのデータが蓄積されていけば、ロボットの自動化は大きく進展するでしょう。提唱者の舘教授は取材の中で以下のように話していました。

「ロボット自体はどんどん自動化に向かっていきますが、データを蓄積する過程を踏まなければそれはできません。ディープラーニングにしても実データが必要で、せいぜい画像を認識するぐらいです。テレイグジスタンスなら収集のためにデータを集めるのではなく、実際に作業をして働いてもらえばいいんです。その蓄積を自動化につなげ、だんだん自動ロボットに置き換えていけます」



さて、Cyber Living Labにていよいよ、テレイグジスタンスの体験です。

頭にはVRゴーグルとヘッドフォンを装着し、モーションキャプチャー用のベストを着用。両手には指の動きをセンシングし、指先に振動など「触り心地」を与えるグローブをつけました。

ちょっとしたキャリブレーションの後、すぐにデモンストレーションを開始。自分の両手をじっと見つめると、そこにある手のひらはロボットになっていました。顔を左に向けると、数m先に自分の大きな猫背の背中があります。それは鏡を見ているような感覚もある一方、抜け殻の自分を見ているような不思議な感覚です。

動画をご覧下さい、スタッフが私の身体に触れると私は少し驚いています。さっきまでロボットに憑依していた自分が、スタッフに身体を触られたことで急に元の肉体に意識が戻る、そんな感覚が瞬時に起こったからです。ちなみに研究初期のテレイグジスタンスは、同じようにカメラロボットが自分の頭であるかのように錯覚するものでした。


驚くべきはそこから先。ロボットの私に手渡されたのは2つのプラスチック製カップでした。一方にはビー玉がいくつも入っており、それをもう一方に移し替えました。指先には何かを掴んでいる感覚もあります。

健常者が同じことをやるのは造作もないことです。しかしそれをロボットにやらせようとすれば、相応の操作技術が必要になるはずです。テレイグジスタンスによって肉体をロボット化したことで、とくに練習をすることなく一連の作業がおこなえました。



舘教授によれば、人が触感として感じるものを分解していくと、力(圧)と振動と温度に分けられるそうです。色のRGBと同様、この3つの要素の組み合わせれば触感を伝送できるとしています。

身体からセンシングしたデータは数値としてロボットに送られ、ほぼリアルタイムに人と同じ動きを再現します。ロボットが人が憑依できる器としてしっかり機能するなら、人はその場にいなくともロボットが代わりに作業を遂行できます。

なお、通信のやりとりでもっともデータ量があるのは、視覚を担当する映像です。舘教授は「5Gの世界になれば遅延は1ミリsec程度」としており、KDDIがTelexistence社への出資を決めたのはこうした背景がありそうです。



Telexistence社の富岡CEOは、テレイグジスタンスによって都市部の人口集中が緩和される可能性を指摘し「これまで人は地域や場所に縛られていました。私はテレイグジスタンによって、その人のフェアバリュー(本質的な価値)は何か? に行きつくんだと思います。そこにビジネスチャンスがあると思っています」とコメントしました。Telexistence社では、国内でロボットの量産に入り、テレイグジスタンスをソフト面ハード面から進めていく計画です。

現在引き合いがあるのは、建設建機業界や航空産業とのこと。当面はB to B向け、B to B to C向けに展開し、その後、コンシューマー市場への展開を視野に入れているとのこと。CTOのチャリス・フェルナンド氏は、メーカーがテレイグジスタンスロボットを作れるような環境を作りたいと話していました。

テレイグジスタンスは30余年の研究の歴史があるものの、この分野に世界の注目が集まりだしたのは、ここ最近のことです。2016年10月、ハクトが傘下する民間月面探査レースを手がけるXPRIZE財団は、次のテーマをアバター、つまりテレイグジスタンスロボットに決定しました。



ガンダム世代はとかく、人が中に入ってロボットを操縦したがります(異論は認める)。しかし、アニメのようにミノフスキー粒子の影響をうけず、通信で遠隔からロボットに憑依できるなら、人の移動に大きなイノベーションが起こるのは間違いのないところでしょう。

遠隔操作ならばたとえロボットが壊れたとしても人は傷つきませんし、人には知覚できないセンサーをロボット側に搭載すれば、擬似的に人の身体能力を拡張できることになります。いずれにせよ、そんなあれこれと夢広がるテレイグジスタンスの世界が我々のすぐ近くまでやってきています。

【動画】遊園地はいつかVRに負ける!リクルート「未来アミューズメントパーク」でVR体験。絶叫コースター、テレイグジスタンスで私はペンギン


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