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5Gはゲームをどう変える?──東京ゲームショウ2019基調講演で語られたこと #TGS2019

本格展開は数年後。しかし確実に5Gは『ゲームチェンジャー』になる

石井徹(TORU ISHII), @ishiit_aroka
2019年9月15日, 午前11:00 in 5G
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東京ゲームショウ2019(TGS 2019)が開幕した9月12日。TGS Forum 2019最初の基調講演として「5Gによって"ゲームチェンジ"は起こるか?」と題したパネルディスカッションが行われました。

新しいモバイル通信技術として注目される「5G」。これまでの固定回線並みの速度を無線で実現できるようになることから、ゲーム業界に対してもインパクトを与える「ゲームチェンジャー」になるのではと目されています。

基調講演では、5Gを展開するキャリアの1社であるNTTドコモ、スマートフォンメーカーのシャープと、ゲーム制作側としてガンホー、スクウェア・エニックス、中国ネットイース(網易)の関係者が登壇。それぞれの立場から5Gへの期待を語りました。

■ドコモが語る「5Gの誤解」

NTTドコモで5Gビジネス推進室長を務める中村武宏氏はドコモの5Gの取り組みについて紹介。パートナーシップによる実証実験を幅広く展開し、多くの企業から注目を集めていると紹介しました。

一方で中村氏は 「5Gはすごいんだぞ、といろんなところでアピールしてきた。その結果もあって、多くの業界のみなさまに興味いただけたが、やりすぎてしまった面もある」として、"5Gの誤解"も生んでしまったと述べました。

TGS 5G
▲NTTドコモ 5Gビジネス推進室長の中村武宏氏

中村氏が"5Gの誤解"と呼ぶのは、技術の展開に対して、期待がふくらみ過ぎていること。たとえば、5Gが使えるエリアはまずは一部の地域からとなり、サービスインの段階では全国では使えません。

また、5Gでは高速や低遅延といったパフォーマンスの良さが紹介されますが、規格通りのスペックが最大限に発揮できるようになるまでには、時間がかかります。

TGS 5G

中村氏は「いつでもどこでも10Gbps、遅延は1ミリ秒以下にはならないだろう」と説明。その上で「展開当初の技術では数Gbpsを出せる端末も作れない。将来的にはできれば1Gbpsの速度を幅広く出せるように進めていきたい」と実測値ベースの控えめな目標を提示しました。

ドコモTGS

ドコモの計画では5Gを数年かけて全国エリアに展開していく予定。並行して既存の4G LTEの高速化も進めます。さらに、都道府県に1か所を目安として、基地局と物理的に近いデータセンターを設置し、「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」と呼ばれる低遅延なデータ処理サービスを展開していく方針です。

TGS 5G▲ドコモはTGS 2019で5Gを体験できるブースを展開しています

関連記事:「ウメハラ」VS「ときど」のストV対戦をARで観戦、ドコモが描く5G時代のゲーム体験

■ガンホー森下氏「5Gで対戦型ゲームをシンプルに作れる」

初っぱなから5Gに対する期待をしぼませるような発言で始まったパネルディスカッション。スマホゲームのベンダーからは、5Gに対して期待と不安が入り交じった意見が表明されました。

ガンホーの森下一喜社長は、「作り手的な目線からすると、多人数型の通信対戦は、レイテンシーの問題は避けては通れない」と、5Gの超低遅延性能への期待を述べました。

TGS 5G
▲ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 代表取締役社長CEO エグゼクティブプロデューサーの森下一喜氏

森下氏は「現時点では、やりたいけれど実現できないという問題が多い」と説明。たとえば『パズル&ドラゴンズ』のようなスマートフォンゲームでは、即時性が求められるオンライン対戦を実現しようとすると、通信対戦や端末への要求仕様が高くなってしまいます。5Gの浸透により、そうしたゲームを実現できるようになれば「対戦型ゲームをシンプルに作れる、工数も単純化できる、ユーザーにとってもリアリティのあるものが作れる」(森下氏)と話します。

一方で森下氏はスマートフォンゲームの価値は、幅広いユーザーに遊んでもらえることとも説明。5Gスマホのみをターゲットにしたハイエンドなゲームは、ビジネス的に成り立ちづらいとも話しています。

森下氏「僕たちの中では、スマホはスマホ向け。スマホの強みは所有率が高いこと。性能にハードルを設けると、強みが薄れてしまう。わざわざアクションゲームをスマホに作ろうとはしない。ハイスペックなものコンソール(ゲーム専用機)で作る」

■スクエニ佐藤氏「ダウンロード速度向上は率直に嬉しい」

スクウェア・エニックスの佐藤氏は、5Gに特化したゲームの展開はまだ先になるとしつつも、5Gでもっとも早く実現できそうな「高速通信」については、歓迎の意向を示しました。

スクウェア・エニックスが強みとするハイクオリティなRPGは、美しいビジュアルを実現するために、アプリのサイズが大きくなりがちな傾向にあります。5Gでのダウンロードを高速化すれば、ユーザーを待たせることなく、ゲームを提供できるというわけです。佐藤氏は「ダウンロード時間が長くなると、そこでユーザーの離脱が発生する。大容量の通信でまずはダウンロードの時間が短くなるので、離脱を防げる」と話しています。

TGS 5G
▲スクウェア・エニックス 執行役員 ジェネラル・マネージャー 情報システム部の佐藤英昭氏

一方で、スクエニはこれまで、5Gについてのリサーチは行っていたものの、5G向けゲーム開発への投資は積極的ではなかったとしています。佐藤氏が懸念するのは、真の5Gの具体像が未だに見えない点。5Gのコア機能の1つであるモバイルエッジコンピューティングが、ユーザー企業にとって現実的な価格で提供されるのか、そしてそもそもいつの段階で「5Gのフルスペック」が発揮できるようになるのか、という疑問については、未だ答えが用意されていません。これが5Gに向けたゲームビジネスへ投資していく上で、大きな懸念点となっているようです。

TGS 5G▲モデレーターを務めたのは、日経BP 日経 xTECH副編集長の山田剛良氏

■ネットイース王氏「クラウドゲーミングが地理的平等を実現する」

ネットイース副総裁の王怡(Ethan Wang)氏は、5Gの登場により、一層実用的になると見込まれるクラウドゲーミング(ゲームストリーミング)について言及。「クラウドゲーミングが平等をもたらす」というユニークな見解を示しました。

ネットイースは、中国の総合インターネットサービス企業。ゲーム業界においては、マインクラフトの中国での配信を手がけるなど、中国では圧倒的なプラットフォーマーとして君臨。また、パブリッシャーとして世界中にゲームを配信し、 『荒野行動』や『IdentityV 第五人格』など、日本でも大ヒットしたタイトルを生み出すしています。ゲーム業界において、世界中で存在感を高めている企業と言えるでしょう。

TGS 5G▲ネットイース副総裁の王怡氏

そして、クラウドゲーミングは、ゲームの基本的な機能を完全にクラウドサーバーに置き、すべて通信で配信する仕組み。これにより、スマホなど端末側の画像処理能力が弱くても、高精細な映像のゲームを楽しむことができます。

クラウドゲーミングの弱点は大容量の通信が発生が必要となるほか、遅延を許容する必要があること。現行の4G LTEでは実現できる性能に限界がありました。

5Gの規格には、携帯電話網内にサービス処理用サーバーを設置して、遅延をなくす「モバイルエッジコンピューティング(MEC)」という仕様が盛り込まれています。これを活用することで、自動運転やドローン管制などが実用化できると見込まれますが、ゲームの世界では、クラウドゲーミングがより身近にまると見られています。

TGS 5G

王氏の主張は、クラウドゲーミングを実用化することで、スマートフォン側の性能に依存しないゲーム作りができるようになるというもの。たとえば東南アジアではスペックが低いスマートフォンが主流ですが、そうした地域のユーザーまで5Gが浸透すれば、高性能なスマホを持つ日本や米国のプレイヤーとフェアな勝負ができることになります。ハードウェアの制約からフリーになるということです。

これは、多くの国にゲームを展開するメーカーにとっては、その国のスマホにあわせて性能をカスタマイズする必要がなくなることを意味します。

■問われるスマホメーカーの基礎体力

「5G時代はスマホメーカーの開発力がより問われることになる」と主張するのは、シャープでAQUOSスマートフォンの開発を統括する小林繁氏。

TGS 5G▲シャープ 通信事業本部 パーソナル通信事業部長 小林繁氏

小林氏「どのメーカーも『なんとなく動く』の製品開発から脱却し、『どのように動くか』を考えて製品開発を行うようになってくるだろう。放熱設計など、アナログな部分も含めた改善が求められる」


TGS 5G

シャープがゲームを楽しめるスマホとして投入した「AQUOS zero」は、他社のようなゲームに特化した機能は少ないものの、タッチパネルの反応速度や持ちやすさ、放熱設計など、スマホとしての基本的な性能を差別化ポイントとしています。

TGS 5G

5G時代で重要求められてくる、"スマホの基礎体力"とはなんなのでしょうか。たとえば低遅延では、5Gの規格上の低遅延速度、1ミリ秒未満が実現された場合、スマートフォンのディスプレイ表示やタッチパネル操作の遅延(一往復10ミリ秒程度)も無視できないレベルになってきます。

さらに、放熱設計も重要です。特に5G展開当初の製品では、通信モジュールからの発熱が大きくなり、スマホ全体が高熱になる可能性があります。せっかく大容量の通信を生かしてクラウドゲームを遊んでいても、熱くなりすぎてすぐに停止してしまうのでは意味がありません。上手に排熱する熱設計がこれまで以上に重要になってくるでしょう。

■5Gが生み出す新しい"ゲーム"

5Gの特徴を活用できれば、新しい"ゲーム"が生まれる可能性もあります。

今、ゲーム業界でのトレンドの1つとなっているのが「イベント」。eSPORTsの大会など、リアルな場に集まって、一緒にゲームを楽しむというムーブが今、盛り上がりを見せています。

こうした場に5Gを持ち込めば、新しい体験が提供できるかもしれません。たとえば音楽ライブなどで、ウェアラブル型の5G端末を参加者に配り、数万人単位で一緒に身体を動かして、1つの"ミッション"を達成するといったものも、ひとつの具体例と言えます。

ガンホーの森下氏は「これまでのイベントでは、ステージ側からのアウトプットが多いが、ユーザーが一体となって楽しめる、今までにない体験も提供できるのでは」と期待を示します。

■5Gは世界を変える。ゲームはその試験場に

ドコモの中村氏が語る通り、5Gのエリアが全国に広がり、5Gスマホをみんなが持つような時代が到来するのは、まだ先になります。そして高速通信や低遅延という5Gの真価がフルに発揮できるまでには、少なくとも2年はかかるでしょう。それでも、5Gはゲームの世界を変えていくけん引役になり得ます。

「これまでの歴史をふり返っても、速くなることは絶対にいいこと」と語るのはガンホーの森下氏。通信速度やレスポンスの向上は、クリエイターにとってこれまでできなかった新しいチャレンジを可能にするといいます。一方で森下氏は、「速くなったから、面白いゲームがうまれるというわけではない」とも述べています。クリエイターの想像力によって、これまでのゲームのセオリーからは考えられなかった新しい形のゲームが登場する。これが森下氏の見立てです。

ドコモ中村氏も、当初のサービス展開にこそ慎重な見方を示したもの、これまで4Gや3Gを立ち上げてきた経験則から、このように語っています。

中村氏「5Gの当初は数百Mbpsほどから始まる。端末にも、形態の制約や、排熱など、課題はたくさんある。最初の端末はあまりこなれていないだろう。ただしそれは日進月歩でよくなっていく。市場のニーズが高まってくれば、多様な端末も出てくるだろう」

「5G後」のスマホがどのような形になるのか、あるいはスマホを置き換えるデバイスが登場するのかは、今の段階では携帯キャリアも、スマホメーカーも正確な未来は誰も知りません。

裏をかえせばそれは、使い手や開発者の発想に応じて、将来のデバイスの形が決まっていくということ。5Gを中心として、さまざまな技術が人々の要望を叶えるために進化していくことになるでしょう。そうした未来の「スマホ的存在」を探り当てるために、携帯キャリアは数多くの業界との連携に乗り出しています。

ゲーム業界は、そうした未来の技術を、先行して取り入れる場になりえます。それはなぜかというと「人が死なない」から。5Gのユースケースとしてよく挙げられる自動運転や遠隔医療などは、ミスがあると人が死ぬ可能性があり、最初から本格展開するわけにはいきません。一方でゲームは、ミスをすると即人が死ぬという設計は難しいため、新しい技術を積極的に取り入れていくことができます。

もしかすると、5Gの普及にともなって、コミュニケーションやデバイスの形も変えていく、その先導者的役割を担えるのが、「ゲーム」なのかもしれません。


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