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ゲル状の壁、高速道路にせり出す巨大な建物。建造物に見る日本との親和性(スイスTech探訪 Vol.2)

日本魂!

Marika Watanabe
2019年10月16日, 午前08:00 in Swiss
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矢崎 飛鳥, 10月29日
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『Press tour to Switzerland for Japanese media A Swiss perspective on Society 5.0』初日の午後には2つの「建築系」最新技術に触れることができました。

1つはNEST(ネスト)、もう1つはTHE CIRCLE(サークル)です。どちらにも、スイス事情を折り込んだ最新技術が使われていますが、日本の影がチラ見えしていました。

まずは、技術の粋を集めたNESTからご紹介します。

世界で唯一、本当に住んで実証実験をしている住居「DFAB HOUSE」

NESTと呼ばれる建物があるのは、チューリッヒ空港から南東へ車で10分ほどのところ。スイス連邦科学技術研究所の一角です。

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EMPA イノベーションマネージャーのEnrico Marchesi(エンリコ・マルケシ)氏によれば、NESTはEMPA(エンパ)という研究所が運営しているとのこと。

スイスには2つの工科大学、4つの研究所があり、それら全てを合わせて「ETH(エーテーハー)ドメイン」という組織が構成されています。その研究所の1つがEMPAであり、それゆえに政府機関の1つであるということです。

とはいえ、EMPAでは何かの技術開発をしているというよりも、大学、企業、政府機関などの知見や技術を試せる場所を提供しているそう。その1つがNESTという建物で、マルケシ氏は、このような施設は世界でここだけと言います。

なぜ、"試せる"場所が必要かというと、新しい素材や技術を開発したとしても、PCで計算されたものや、実験室内だけのデータでは、実際に人が住んで使ってみたときの"リアル"がわからないから。その技術を取り入れて住める空間をNEST上に組み込み、そこに実際に住んでもらい、実用に耐えられるかを確認できるのです。

また、市場に出ることなく埋もれてしまいがちな新しい素材や技術を生み出している研究所と市場の橋渡しをする、という役割もあるそうです。

ちなみに、住んでいる人は研究所の人ではないとのこと。博士号を取ろうとしている学生、または取得した人など、「高学歴ではあっても」(マルケシ氏談)無関係の人が、ここで何が行われているか、ここがどういう場所かを理解した上で家賃を払って利用していると教えてくれました。

建築物で「革新的」と言われてもピンとこないので、NESTに組み込まれているDFAB HOUSE(ディーファブ ハウス)と呼ばれるユニット部分をさっそく見せてもらいましょう。案内してくれるのはHannes Mayer(ハンネス・メイヤー)氏です。


1. ロボットが鉄骨を組んだグネグネした壁

わたしたちが壁や柱を想像するとき、ほとんどの場合は"直線の何か"ではないでしょうか。ところが、DFAB HOUSEの共用リビング部分に使われているのはグネグネとした壁。

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しかも、この上にも住居が2層ほどあるのにかなり薄く感じます。

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ところが、この複雑な曲線が高い強度を生み出しているのだそうです。素材は、メッシュ状の鉄筋(Mesh Mold メッシュモールド)とリサイクルコンクリート。

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メッシュモールドを鋳型に見立てて、コンクリートを注入していきます。短時間で効率的に、しかも少ない量のコンクリートで頑丈な壁ができあがっていきます。

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これほど複雑な鉄筋を組むのは人力では時間がかかりすぎる、ということで、メッシュモールドの組み立てはプログラミングしたロボット任せ。なお、人力との工期の比較については「ちょっとわからない」とのこと。これだけ複雑な曲線を人力で組んでもらおうという発想がなかったから比べられないのだそうです。



これほどグネグネとした曲線を持つ壁を狭い日本の家屋で取り入れようとすると、家具の配置に困りそうですが、耐荷重や強度を高くするのに効果的とあらば、安全して過ごせるリビングづくりに使ってみたくなるかもしれません。


2. 専用型なしに生み出される一辺が湾曲した柱

柱にも曲線が利用されています。

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しかもすべすべです。

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なんとこの柱、専用型枠不要で、ロボットから「ニュルン」と生まれます。



これは、「スマートダイナミックキャスティング」(SDC)と呼ばれる工法で、実物大の柱の専用型ではなく、ごく小さな型枠を制御することで、耐荷重性の高い鉄筋コンクリート柱作りを可能にしたものです。

建築法の範囲内で安全であることが確認されていれば、施主の好みに応じたコンクリート柱を自在に作れる、というわけです。使い終わったら捨てるだけの型枠を作るより、はるかに環境に優しそうですね。


3. 日本の障子を彷彿とさせるゲル入りの壁

柔らかくて半透明の壁――話を聞いたときには、「それはいったいなんですか?」と日本語で質問しそうになりましたが、実物はこのようなものでした。

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この壁は、外光を優しく取り込むので"半透明"と説明されています。窓際だけでなく、部屋全体が優しい光に包まれます。

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ぐっと押してみると弾力があります。

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この壁は、2枚のフィルムとその間に注入されたエアロゲルで構成されています。ゲルとはいえ非常に軽く、なおかつ断熱性も高いとのこと。1年を通じて、快適に住めるんだそうです。

「日本の障子に似ていますね」と感想を述べたところ、メイヤー氏は「かなりデザインの参考になった」と応対。飛行機で12時間離れたスイスで日本に出会えた瞬間でした。

鉄道とバス、おまけに飛行機までもすぐに乗れる街「THE CIRCLE」

もう1箇所訪れた建築物は「THE CIRCLE」。目の前を通る高速道路に沿った半円状のデザインが目を惹きます。

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THE CIRCLEは、チューリッヒ国際空港に隣接する多目的複合施設で、18万平方メートルにもおよぶ敷地に建てられており、総工費はおよそ10億スイスフラン(日本円換算で約107億円)。

この建物のデザイナーは、なんと日本人。2009年に開催された世界12カ国、90チームによるコンペを山本理顕氏率いる山本理顕設計工場が勝ち抜いたのです。

勝因は「ほかのコンペティターは、ショッピングモール的な機能のみを打ち出していたが、山本理顕設計工場では、スイスの旧市街の雰囲気を残した街を意識した。空港側から見れば1つの建物のようですが、裏の丘側から見ると、たくさんの建物、街が立ち上がっているようにデザインしたこと」だとプロジェクトリーダー チーフアーキテクト 妹尾慎吾氏は説明します。

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斜めになったファサード(建物正面)は、見た目がほぼガラス。スイスでは、建築物のガラス窓は3重であること、さらに夏の日差しからインテリアを守るため、遮光性のあるシャッターなどをつけることが求められています。さすがにここにシャッターはつけられないので、遮光性のあるガラスで代替。7層のガラスが、日差しや寒さから居室空間を保護します。

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場所によっては、ペアガラスの間に電動ブラインドを挟んだ窓もあります。このガラスとガラスの間の空間は密封されており、中にホコリが入り込まないよう、常に空気を送って気圧を少しだけ高く保っています。



ちなみに、入居が決まっているのは、Microsoftスイス本社、ハイアットリージェンシー、チューリッヒ大学病院、OMEGAなど。

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▲ハイアットリージェンシーホテルのバー(予定)。来年には完成し、入れなくなるので今のうちに堪能

ジャパニーズスピリッツとの親和性の高さを見た

NESTのDFAB HOUSEも、チューリッヒ空港前のTHE CIRCLEも、スイスの高い技術力によって作られていますが、前者では障子からインスピレーションを得て、後者では設計そのものを日本人が行うなど、日本とスイスの親和性の高さを垣間見ることができた1日目の午後でした。



「TechCrunch Tokyo 2019」11月14日、15日に開催



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