オリンパスは今年9月、ドイツの写真・映像見本市 Photokina 2014で、OPC(オープンプラットフォームカメラ) - Hack & Make Projectの活動を発表しました。

オープンプラットフォームカメラ (OPC)とは、カメラの撮像モジュールやファインダーなど、パッケージ化された製品のパーツをそれぞれオープンにし、ハードもソフトも使う側が自由な発想でハックし開発することができるコンセプトのカメラ。OPC Hack & Make Projectとはデベロッパーやクリエイター、そしてユーザーと共に新たな写真体験の開拓を目指すプロジェクトです。

カメラ(OPC)のプロトタイプには、オリンパスのミラーレスカメラと同じ大型センサとマイクロフォーサーズマウントを採用しています。

オープンプラットフォームカメラ  プロジェクトの野望

プロジェクトの趣旨はこちらの図でよく分かります。

オリンパスはカメラ(OPC)を提供し、ハードウェア仕様やアプリ開発用SDKとドキュメント、外形の3Dデータを公開します。

開発者やクリエイターは、こうした公開情報をもとに、OPCと連携するスマートフォンアプリの開発や、OPC用アクセサリーを自由に製作できます。プロジェクトのWebサイトではすでにSDKとボディ外形の3Dデータを公開しており、マイクロフォーサーズ マウントを備えたOPCのプロトタイプ情報も掲載中です。

またOPC Hack & Make Projectでは、こんなものがあったら面白いというアイデアを持つユーザー、アプリやハードウェアの開発者やデザイナーによるコミュニティの生成も支援します。

従来のメーカー(作り手)とユーザー(使い手)の関係を変化させ、参加する全員が作り手となる関係を新たに構築することで、これまで誰も見たことがない新しいカメラ、さらには伝統的な「カメラ」の概念を超えた何かの開発や、写真の新しい楽しみ方を模索するプロジェクトというわけです。



OPCのテスター募集中。カメラのプロトタイプを無償で貸出します


プロジェクトでは12月26日までの期間、OPCのテスターを30名限定で募集しています。テスター選ばれると、OPCのプロトタイプ(実機)を手元に置いて、アプリケーションの開発やアクセサリーの制作ができます。対象は法人・個人を問わず、OPCを使って実現したいアイデアがある人。特にスマートフォンアプリの開発者や、OPCのカメラアクセサリー制作ができるクリエイターを歓迎しているとのこと。応募は、Webサイトの専用フォームから可能です。応募内容を審査の上、2015年1月にはテスターを選出する予定です。

ちなみに、OPCの最新プロトタイプは、11月24日に開催したEngadget Fes 秋葉原 2014 Winterで初めて一般公開されました。これを皮切りに、東京・渋谷のFabCafeでOPCに触れられるイベントを月1回のペースで実施します(直近では2014年12月11日。2015年1月下旬にも開催予定)。OPCのタッチ&トライに加え、OPCのハードやファームウェアの基本仕様、SDKの説明会や、レーザーカッターや3Dプリンターも無料で開放、考えたアイデアをすぐに形にしてみるラピッドプロトタイピングも予定していますので、テスターへの応募を考えている方は、参加してみると良さそうです。
また、Facebookページではプロジェクトの最新情報を随時発信しています。



ハードウェアとしてのOPCは、円筒形のボディにマイクロフォーサーズ規格のレンズマウントとシャッターボタンを搭載、いわゆるレンズスタイルカメラ的なミニマムな構成です。

イメージセンサーは有効画素数1600万画素のLiveMOSセンサー。ボディには三脚穴のほか、両側面に汎用ネジ穴を備えており、市販のアクセサリー類とも組み合わせがしやすく、今後生まれるであろうさまざまな使い方にも柔軟に対応できるようになっています。

機能面ではWi-Fiを内蔵。スマートフォンやタブレットをはじめとした機器と無線接続でき、公開APIを使えば非常に細かい点まで外部のアプリケーションから制御可能です。撮影機能としては静止画と動画を撮影でき、静止画であれば連写やRAW撮影にも対応します。


OPCの魅力の一つは、SDKを使ってカメラを制御できるところ。最近は専用アプリでリモートシャッターやファインダーとして使うことができるカメラも増えてきましたが、OPCでは自作のアプリ上から、光学/デジタルズーム、カメラのドライブモード、撮影モード、レンズ絞り値、シャッター速度、露出補正値、ホワイトバランスタイプ、ISO感度値など、基本的なカメラ設定項目のほとんどがアプリからコントロール可能です。

単なるマニュアル撮影ができるレベルのアプリではなく、カメラを制御するためのAPIがきちんと整備されているので、開発のハードルの敷居は高くないはず。従来の「カメラアプリ」とは違う発想のアプリや、人間が使うアプリではなくロボットやネットワーク越しの撮影など、可能性は発想次第でいくらでも膨らみます。

メーカーとユーザーのはざまがOPC誕生のきっかけ

OPCはハードウェアの形こそいわゆるレンズタイルカメラに似ていますが、「オープンプラットフォームカメラ」というプロトタイプの呼称はユーザーと一緒に新しいカメラを作ってゆくのだというオリンパスリンパスの意思を強く反映しています。

OPC Hack & Make Projectを立ち上げた経緯と意図、今後の展望について、プロジェクトの発起人であるオリンパスイメージングの佐藤明伸氏(IBP推進本部IBP推進2部開発グループリーダー)に話を聞きました。


カメラとは"モノ"であり、"メーカー"がマーケティングに基づいて開発し、"ユーザー"に販売するもの。佐藤氏によれば、今回のプロジェクトを立ち上げるまでそんな固定観念に捕われていたといいます。

それを崩したのはMITメディアラボのワークショップでした。「驚いたのはアイデアを形にする力と、それをブラッシュアップしていく速度。1つ1つのアイデア自体はありふれたものであったり、突飛すぎるものであったりと玉石混交ですが、アイデアのいい面と悪い面を選別してよりいい形にしていくサイクルがとても速かった。アメリカでたくさんのイノベーションが起こせている要因の一端を肌で感じた思いがしました」

そうした経験を刺激に日本でもハッカソンを開いたところ、集まったクリエーター達はいろんなアイデアを出してきてかなり盛り上がったそうです。日本にもそういったクリエーターが相当数存在している可能性に気づいたと佐藤氏。「これまではメーカーとユーザーをはっきりと分けてしまっていたけれど、作ることで楽しむという点に開拓の余地はまだまだあります。面白いものを作るという目的がはっきりしていれば、そこではメーカーとユーザーという立場の違いはあまり問題になりません。むしろユーザーにも作り手として参加してもらうことができれば、両者の間で何か新しいものが生まれるのではないかと考えました」

遡ること2012年、現在のOPCの試作機1号とも呼ぶべきものを製作してMITメディアラボに持ち込み、オープンコラボレーションの取り組みを始めました。


「映像体験とは五感に訴え、いろいろな人にさまざまな感情を提供するものです。動画や静止画の見せ方もまだまだ見出されていない表現がたくさんあるはず。そういうものを見つけていきたいと思っています。そのためにはカメラもハードやソフトの制約からできるだけ自由になるべきです」

そう考えると多様な可能性が試せるものを作る必要があったと佐藤氏は言います。そこでSDKを開発し、公開に踏み切りました。さらに、「こだわったのはOPC以外とつながるための接合部です。背面の形状や側面の汎用ネジ穴などは他のものとできるだけ接続しやすくするという発想で設計しています。アイデアを形からもソフトウェアからもHack & Makeできるようにすれば、新たな映像体験を作る上で自由度が上がります」

製品全部をメーカーが作らない時代

オリンパスが期待しているのは、複数の開発者やクリエーターが集まり、各々のアイデアを掛けあわせることで、より優れた新しいアイデアを生み出し、形にすることだと佐藤氏は話します。

「単にWebでSDKや形状データを公開するだけではなかなか形にするのは難しいと思っています。そこで実際にプロジェクトを動かす一例として、OPCのテスターの一般募集に先んじて、開発者やクリエイターにOPCをHack & Makeしてもらう"PILOT PROJECT"を立ち上げました」

その中の一つとして進行しているのが、フルマラソンのUSTREAM中継で知られるマラソンランナーのジョセフ・テイム氏を中心とした「ウェアラブルモバイル・プリクラ・スタジオ」。ひとことでいえば、OPCをウェアラブル化して、いつでもどこでも自分撮りができるシステムです。テイム氏の熱意やおもしろさに惹かれて、開発者やクリエーターが自発的にチームを組むことで生まれたプロジェクトとして活動しています。

「いまは作り手が自分の世界を表明し、コミュニティを作って、横のつながりで広がっていく時代。3Dプリンターの登場で、これまでメーカーしか作れなかったものが簡単にできてしまいます。データさえあればものが作れる。空間を超えてものを転送できる時代と言い換えられるかもしれません。もちろん、製品化の過程で部品としてメーカーが作るべきところは作りますが、全部をメーカーが作る必要はありません

ソフトウェアでは昔からオープンソースの取り組みがありました。こうしたオープンソースの流れがハードウェアでも必ず来ると佐藤氏は信じています。「間違いなくそれが当たり前になる時代がきます。私達のように日本の普通の会社にいる人間からすれば、これまで事業の中で、こういった形で人が集まるというのはあり得ないことでした。でも、これからは作り手になりたい想いのある人同士を結びつける場と仕組みを作っていきたい。そして彼らがアイデアを出し続けていくことをサポートすることも、これからの私達の仕事だと思っています」

どういったものが出てくるのか

佐藤氏はOPCの今後に関して「多様なアイデアを形にしていく中で、いずれOPCではできないものが出てくると思う」と予想しています。

「そうなるとOPC自体も変えていく必要があるし、SDKや外形データも新たなバージョンを作る必要がある。今は"マイクロフォーサーズシステムのよさを広めること"を念頭にプロジェクトを進めていますが、たくさんのアイデアを形にする試行の中で、いずれこれまでのカメラとは違った形で別の形のプロトタイプを発表していければと思います」

ソニーのレンズスタイルカメラもAPIを公開していますが、OPC Hack & Make Projectの場合は、Hack & Makeするための素体として用意する点がポイントだと感じています。こうした活動の結果、どういったものが出てくるかはまだ未知数です。

「実際にやってみないと分からないですが、これまでの活動から今までにないものが何か近いうちに出てくるのではないかという予感はあります。OPC Hack & Make Projectを始めたことで、カメラや写真の好きな方だけではなく、OPCを単体の"カメラ"としてとらえる先入観のない方とも一緒にことを進める機会に恵まれました。その中で、カメラの新たな使い方や映像の新しい表現や楽しみ方を発見していけたらと考えています。今はどんな立場にいる方でもいい、アイデアをどんどん形にできる仲間をたくさん増やしたいと思っています」

OPC Hack & Make Projectでは12月以降、OPCの実機に触れられる機会が増え、本格的に始動しつつある中、佐藤氏は何を感じているのでしょうか。「いままでは製品としての開発が完了しないとユーザーに製品を届けることができませんでした。今回のプロジェクトのように、プロトタイプを一般公開し、ユーザーと一緒に新しい価値を共につくるというプロセスはいままであり得なかったのです。でも今は、トップの理解があって、アイデアを肯定してもらい、こういう風にやらせてもらえている。これは本当にありがたいことです。これからいろいろな形で試行を重ねて、OPCの持っている可能性を突き詰めていきます」

 
0シェア
0
0
0
0シェア
0
0
0